“仕事始め”前に総退陣… 革新投資機構と経産省が大乱闘、責任は

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操り人形

 田中社長を知る銀行関係者によれば、

「旧三菱銀行時代から気性の荒いことで有名だった田中社長は、11月24日に経産省の嶋田隆事務次官から報酬案の減額を提示された際、その場で激高して席を蹴り、一方的に部屋を出て行ってしまったそうです」

 もっとも、田中社長が憤慨した理由は、報酬の問題だけではない。

 前身の「産業革新機構」は経営難に陥った企業の救済色が強く、投資先のジャパンディスプレイが大赤字を出すなどして、多くの批判を受けた。

「その反省をふまえ、改組したJICに関しては、政府の関与をできるだけ弱めるという話で進んでいたのです。しかし、経産省はこちらも手の平返しをして、急に政府の関与を強めると言い出したのです」(前出の経済部記者)

 こうして両者の溝は決定的に深まり、喧嘩別れと相成ったわけだが、一体この乱闘の責任は誰にあるのか。

 経済ジャーナリストの松崎隆司氏はこう語る。

「私は政府に一番の責任があると思います。世間からの批判を気にして一度提示していた成功報酬を下げるというのは、もとから報酬に見合った仕事を期待していなかったようにも見てとれる。つまり、政府は自分たちの言うことを聞く操り人形が欲しかっただけなのでしょう」

 となれば、後任選びは難航必至。

「平気で報酬を下げる組織ですから、何をやらされるか分からない。もしかしたら政治家の使いっ走りをさせられるかもしれない。今回の件でそんなレッテルが貼られてしまったので、優秀な人材はなかなか来ません。ですから、産業政策としてはもう終わりだと思いますよ」(同)

 笑いを通り越して、ただただ呆れるばかりである。

週刊新潮 2018年12月20日号掲載

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