レバノン17億円豪邸、再婚妻とのNY宅、宮殿結婚パーティー… 「カルロス・ゴーン」疑惑のカネ

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リストラ2万人に詫びの言葉は…

 冷徹なるこの男の非情さは日本人にも刃(やいば)を向けた。

 それが2000年代に日産が奇跡の「V字回復」を遂げた最大の要因、2万人のリストラである。ゴーン容疑者の地位と名誉が、彼らの屍を踏み台にして得られたことは論を俟(ま)たない。

「結局、彼は自分の利益を最大化することにしか、興味がなかったんですよ」

 とは、当時の日産で副社長の要職にあった元役員だ。

「最初こそ日産のためにと汗水流していたけれど、それは業績回復が自分の実績になるウィンウィンの関係だったから。05年にルノーのCEOになって考え方が変わったのでしょう。独裁者特有の気質があり、人を味方と敵で区別する。異論を挟む人間は容赦なく左遷されました。情実人事が多く、その典型が今回逮捕されたケリーを日産の代表取締役に据えたこと。北米日産で人事畑を歩いてきたけど、成果なんてまったく上げていなかった男です」

 そんなトップを据え置く日産は不祥事を連発した。

 たとえば昨年9月、車の完成検査を有資格者が行ったよう偽装した事件や、今年7月には、完成検査の一過程である排ガス性能検査でもデータ改竄が発覚した。

 実際に不正現場で働いていた従業員が告発する。

「ゴーンさんが得た気が遠くなるような額の報酬や、会社の金で購入していた豪邸の話を聞くと、いくら我々が頑張っても最後は上の方だけ潤う仕組みになっていたんだと思います。ノルマが厳しくなる一方で予算が削られ、圧倒的に検査機器や人手が足りずに現場が回っていなかった。工場の社宅も設備が古くて、出向で来たインド人らが、こんなところには住みたくないと嘆くほどでした」

 深夜残業が続き、時にはほぼ3日間もの徹夜仕事を余儀なくされたこの男性は、心身に不調を来たし退職を余儀なくされたと続ける。

「辞める際、残業代をつけさせて貰えなかったと上司に相談しても、お前が悪いと突き放されて終わりです」

 むろん、まだ会長の座に君臨していたコストカッターから、詫びの言葉がなかったのは言うまでもない。

週刊新潮 2018年12月6日号掲載

特集「新聞テレビでは分からない『カルロス・ゴーン』20の疑問」より

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