「酸化」よりタチが悪い「糖化」 “体のコゲ”が老化をもたらすメカニズム

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骨粗鬆症も白内障も

「AGEは体内で、数週間で生成されますが、AGEが蓄積されるタンパク質は、部位ごとに代謝回転が異なります。たとえば、ヘモグロビンの代謝は数カ月なので、AGEが生成しても代謝とともに数カ月で消えますが、一方、寿命が長いタンパク質もある。コラーゲンは代謝に15年かかるので、シワやシミの原因になる。軟骨は代謝に117年かかるといわれ、事実上入れ替わらないので、骨にAGEが溜ると骨粗鬆症(こつそしょうしょう)のリスクが高まるのです」

 そうキッパリ言われると、首肯していいものか戸惑うが、骨粗鬆症の専門医である伊奈病院整形外科部長の石橋英明医師も説く。

「骨はカルシウムが半分、残り半分はタンパク質の一種であるコラーゲンで構成され、コラーゲンの分子は架橋構造でたがいにつながり、しなやかです。しかし糖尿病患者は、骨のコラーゲンに余分な糖がつき、異常な架橋ができる。するとしなやかさが失われ、骨が弱くなります。この異常架橋は糖化による生成物、つまりAGEの一種です」

 牧田院長の話に戻るが、ほかに目や血管もAGEの影響を受けやすいという。

「血管もコラーゲンでできていて寿命が長いため、糖化の影響を受けやすいのです。血管壁は糖化やAGEの影響でもろくなり、これが動脈で起きると動脈硬化になり、脳梗塞や心筋梗塞にもつながる。目では、水晶体が曇る白内障の原因はAGEで、紫外線もAGEを増やします。水晶体を構成するタンパク質は一生代謝せず、AGEの影響を強く受けます」

 深作眼科の深作秀春院長も、補って言う。

「糖尿病の合併症で白内障の症状が出ている患者さんは多いですが、白内障には糖化が深く関わっています。血中に糖が多い方は、目の水晶体の約4割を占めるクリスタリンというコラーゲン状のタンパク質の内部に糖が入り、コラーゲンと結合して蓄積されていきます。こうしてコラーゲンが糖化すると、体温で加熱されてAGE化し、規則正しく並んだクリスタリンの分子間に異物として残り、分子配列を乱すのです。網膜症にもAGEが関与している可能性が高いです」

 さて、先に触れた腎臓について牧田院長が説く。

「血液の濾過器である腎臓の透過膜は、コラーゲンでできています。そのうえ全身の血液が絶えず集まるので、AGEの影響を受けやすい。だから、糖尿病患者の代表的な合併症が腎症なのです。また、全身に張り巡らされた神経も、神経細胞を構成するタンパク質の寿命が長いため、AGEの影響を受けます」

 牧田院長によれば、AGEこそが老化の元凶。しかし、それが口から摂取した糖質に由来する以上、食事をコントロールすることで、老化を防ぎ、若返りを図れるということである。

(2)へつづく

週刊新潮 2018年11月29日号掲載

特集「長生きはしたくなくても『100歳時代の食卓』」より

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