「酸化」よりタチが悪い「糖化」 “体のコゲ”が老化をもたらすメカニズム

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糖化=体の“コゲ”

 あらためて牧田院長の説明に耳を傾けたい。

「体の老化につながるものでは、体内の活性酸素によって細胞が傷つけられ、老朽化していく酸化が知られています。これは体の“サビ”に当たりますが、最近、体の“コゲ”である糖化のほうが悪影響をおよぼすことがわかってきました」

 その糖化とは、

「タンパク質がブドウ糖と結合して劣化することですが、結合後も反応が続いて構造が複雑に変化していく。こうして最終的に、100種類以上の構造物が生成され、その総称がAGEと呼ばれます。AGE自体は1910年代から知られていましたが、医学の分野で注目されるようになったのはずっと後年。これが合併症や老化の原因物質ではないか、と疑われたのです」

 ただし、研究が順調に進んだわけではなかった。

「AGEには蛍光反応があり、特殊な光を当てることで、皮膚に蓄積したAGEは確認できるようになりましたが、血中のものなどは微量なので測定できませんでした。しかし91年、ロックフェラー医学研究所の研究員だった私はAGEの抗体を作成し、抗原抗体反応を使った新しい免疫学的測定法を開発、血液中のAGEを測定できるようにしたのです。AGEの免疫学的測定法の結果についての論文は『サイエンス』誌にも掲載されました」

 ひとたび測定できるようになると、多くのことがわかってきたという。

「糖尿病腎症は、私は以前からAGEが関係しているとにらんでいました。実際、血液中のAGEを測定してみると、透析が必要なくらい重症の患者さんのAGEは正常な人の8倍もありました。中程度の症状の患者さんは2倍程度なので、腎臓が悪くなると、AGEの量は指数関数的に上昇するとわかったのです」

 腎臓はAGEの影響を受けやすいようだ。その理由には追って触れるが、体内にもAGEの影響を受けやすい部位と、そうでない部位があるというのだ。

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