北方領土「4島返還」断念なら保守層反発、それでも安倍総理が“賭け”に出る事情

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安倍総理が「賭け」に出るワケ

 返してもらったところで、なかなか住み良い島とは言い難そうだが、無論、それと領土問題は全く別の話で、日本の主権が侵害されている現状を放置しておくわけにはいかない。とりわけ、保守陣営にすれば「2島返還」はもちろんのこと、まず歯舞と色丹、次に国後と択捉という「2島先行返還」も容認できることではない。なぜなら、

「ロシアが欲しいのは日本との平和条約です。それが手に入ってしまえば、残りの2島も返しましょうなんてことになるわけがなく、ダラダラ交渉を引き延ばして、日本はポイ捨てされるだけです」(木村汎(ひろし)・北海道大学名誉教授)

 つまり、悲願である4島返還はあり得なくなってしまうからだ。ではなぜ、安倍総理は4島が返ってくることが永遠にないかもしれない、丁半博打にも似た「危険な賭け」に出たのか。とりわけ、保守政治家として売ってきた彼にしてみれば、熱狂的かつ政権基盤でもある保守支持層の反発を買うだけなのではないか。

 前出の名越氏はこう分析する。

「実は安倍総理にとって、56年宣言を基礎にすることは、父親である安倍晋太郎元外相の遺訓でもあるんです。晋太郎さんは外相時代、国会で『日本は日ソ共同宣言を出発点としていく』と言っていますし、訪ソした際、ゴルバチョフ書記長にも同趣旨の打診をしています。こうした姿を、安倍総理は外相秘書官として見て育っているんです」

 加えて、

「安倍総理は総裁3選にあたり、『戦後日本外交の総決算』を公約に掲げました。しかし、北朝鮮による拉致被害者の奪還のめどは立たず、分かりやすい成果を上げられていない。その焦りから、日露外交での『成果』に飛びついたのだと思います」(同)

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