“陛下は靖国を潰そうと…” 不敬発言流出はクーデターという「靖国神社」の権力闘争

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不敬発言流出はクーデターという「靖国神社」神々の権力闘争(1/2)

 御霊(みたま)は安らかに眠り、参拝者も心安らぐ。神社のあるべき姿であろう。しかし目下、日本を代表する神社は、英霊たちの安眠を妨げる耳障りな「雑音」で満たされている。戦死者が祀られている靖国神社で、内部闘争という「戦闘」が繰り広げられているようなのだ。

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 10月17日から20日にかけて、都心のオアシスとでも言うべき東京・九段北の広大な敷地は荘厳さと賑やかさに包まれていた。

 靖国神社。

 明治2(1869)年、明治天皇の思し召しによって創建。戊辰戦争以来、国のために殉じた246万6千余柱が眠る、類例なき神社だ。その最重要の祭儀である例大祭は春秋の年2回行われることになっており、この度、本年の秋の例大祭が開かれたのである。

 尾辻秀久元参院副議長をはじめとする超党派議連「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」のメンバー71人が集団参拝。

 また一般の参拝客は、英霊に頭(こうべ)を垂(た)れるとともに、たこやき、りんご飴、チョコバナナ、ケバブ、ラムネに生ビール……それらを露店で買って楽しみ、文字通り「祭り」の雰囲気に浸っていた。

 しかし、そこにはどこか虚しさが漂っていた。肝腎の人がいなかったのだ。安倍晋三総理。かつて彼は、靖国参拝を公約に掲げながら、最近は九段北に足を運ぶことができていない。いや、それ以上の問題があった。靖国神社にとって、総理よりも誰よりも、いらしていただくことが「最大の課題」である方の姿がなかったのだ。

 天皇陛下は、今年の例大祭にも御親拝をされることはなかった――。

 目下、靖国神社は大揺れに揺れ、その動揺は収まる気配を見せていない。「震源」は、10月1日に発売された「週刊ポスト」(10月12・19日号)だった。

〈「陛下は靖国を潰そうとしている」靖国神社トップ「皇室批判」の波紋〉

 こう題された記事が掲載されたのである。この記事が出ると神社界は大騒ぎとなり、10月10日には靖国神社のトップである小堀邦夫宮司(68)が退任する意向だと発表され、同月26日の総代会で後任宮司が決定される運びになるという、電光石火の「幕引き」が図られたのだ。

 件(くだん)の記事には、小堀氏が6月20日に行われた靖国神社内の会議で発した言葉が音声データをもとに紹介されている。曰く、

〈陛下が一生懸命、慰霊の旅をすればするほど靖国神社は遠ざかっていくんだよ。そう思わん? どこを慰霊の旅で訪れようが、そこには御霊はないだろう? 遺骨はあっても。違う? そういうことを真剣に議論し、結論をもち、発表をすることが重要やと言ってるの。はっきり言えば、今上陛下は靖国神社を潰そうとしてるんだよ。わかるか?〉

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