大阪府警の無能さを知らしめた「樋田淳也」容疑者の逃避行 “余裕”感じさせる自転車旅

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ツーリストに「変身」

 ソレーネ周南を管理する周南ツーリズム協議会の笹木大(ひろし)事務局長が振り返る。

「彼がうちの建物内に入ってきたのは9月29日の午後5時50分頃。当日は民間に委託している私服巡回員、いわゆる万引きGメンが2名いました。このふたりが、濃い黒のサングラスに黒いキャップという出で立ちの彼を見て『怪しい』と直感し、ずっと注意して見ていた。すると、ピーナッツバターフランスパン、鹿野ファーム(山口県)製のトンカツ、餅などをズボンの腰回りのところに挟み、そこに上着を被せて見えないようにして、そのまま施設の外に出て行ったんです」

 現金を280円しか所持していなかった樋田容疑者は、総額1053円分の食べ物などを万引きしたのだ。

「万引きGメンが声を掛け、それから8畳ほどの広さの事務所に連れて行き、私を含む職員3人が彼の前に立ちはだかって彼を問い詰めましたが、『財布を取りに行こうとしていただけ』と言い、万引きを認めようとしませんでした。警察を呼んだと伝えると『外に行かせろ』『トイレに行かせろ』と騒いで暴れ、私たちの横をすり抜けようとしたので揉み合いになったほどです。なぜか彼は最後までトンカツだけは出そうとせず、警察の方が手錠をかけようとして彼が激しく抵抗していた時にズボンの中から落ちてきました」(同)

 往生際の悪さが際立つが、

「名前も住所も言わなかったこともあり、彼があの樋田淳也だとは全く気が付きませんでした。後で、報道の方からの連絡で知ったくらいです。なにしろ、ここは九州に向かう幹線道路沿いでバックパッカーが多い。自転車で旅している人もたくさんいますから、まさか逃走犯だなんて思いも寄りませんでした」(同)

 なるほど、「自転車旅」を演じ、樋田容疑者は警戒の目をかわしていたわけだ。

 自転車やヒッチハイクなどでの旅を30年以上にわたって続けている紀行作家のシェルパ斉藤氏が後を受ける。

「山口県は、山陰ルートと瀬戸内海ルートで九州を目指すツーリストやヒッチハイカーが合流する地域。私も山口県でヒッチハイクをしたことがありますが、『多いんですよね』と言われ、受け入れてくれた。バックパッカー慣れしている地域なんです」

 また、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が解説するには、

「自転車で日本一周しているツーリストを装えば、警察の目をくらますカモフラージュになるし、ましてやふたりで仲良く一緒に自転車を漕いでいる人を、警察は逃走犯とは思いません」

 加えて、

「樋田は『行くぞ! 日本一周中』と書かれた紙を持ち歩いていた」(捜査関係者)

 彼は見事にツーリストに「変身」していたことになる。

(2)へつづく

週刊新潮 2018年10月11日号掲載

特集「しまなみ海道と海峡巡りで物見遊山 『道の駅』が兵站基地だった『富田林署の樋田淳也』逃走ルート」より

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