元横綱「輪島大士」さん逝去 黄金時代を築いた「北の湖」さんと本誌で初対談

スポーツ週刊新潮 2015年1月22日号掲載

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日本人横綱が見たい

北の湖敏満 どうもご無沙汰しています。数年前に食事をご一緒したことはありますし、何かでばったり会うことはありましたが、土俵前で会うのは、引退後、初めてですかね。

輪島大士 そうですね。今回、こうやって理事長にお会いできて、本当に嬉しい。私は幸せ者です。

北の湖 ここで会って、昔を思い出しました。お互いしのぎを削った土俵のそばですから。病気になられたと聞いて心配してました。昔は、喋ることなんてありませんでしたね。

輪島 喋るようになったのは私が引退してからですね。

北の湖 現役時代には食事をしたこともないですから。偶然お店で会ったことはありましたけれど、それで、“じゃあ一緒に飲みますか”とはなりませんでした。一度も。
輪島 ライバルですから。

北の湖 ええ。でも、数年前にテレビのクイズ番組でご一緒した時もスタジオで挨拶した程度で、ろくに話しませんでしたね。これまで、インタビューでお互いについて語ることはあっても、こうやって面と向かってきちんと話すのは、まずなかったと思います。

輪島 初めてだね。

北の湖 輪島さんの病気がきっかけかもしれないですね。私も一昨年末に病気をして大腸ポリープを切除しましたけれど、お互い、昔を振り返る年齢になりました。輪島さんとは一緒に相撲を取ってきた仲間ですから、私も快くこの対談を受けることにしたのです。

輪島 ありがとう。いま、あの北の湖さんがトップでいることが私はすごく嬉しいです。(右手の親指を立て)最高!

北の湖 先ほど土俵前で撮影している時、輪島さんに「ふだん歩いてるか?」って聞かれました。輪島さんは歩く姿が週刊誌に載ってましたけど、私はあまり歩いてないんです。痩せたら歩こうと考えているんですがなかなか痩せない。このまま歩くと膝に負担がかかってしまうので、歩くに歩けないんです。輪島さんはそれも心配してくださって。

輪島 毎日、ウォーキングをしていますよ。

北の湖 そうですね。食事に気をつけているだけじゃダメですね。ちゃんと運動しなければ。ただ、私は病気を機に、一昨年の12月からお酒を一滴も飲んでいません。1年以上お酒をやめてますよ。そもそも、お酒をうまいと思ったことがあんまりなかったから、あっさりやめられました。

輪島 おお、私も。病気してからは飲んでませんよ。ノンアルコールは飲みますけど。

北の湖 私は現役の時はガンガン飲んでましたが、輪島さんはお酒弱いんですよね。

輪島 そう! 相撲と一緒で理事長より弱いんです!

北の湖 ははは。ところで、私はそんなに昔を振り返ることはないんですけど、昔の相撲について、本や雑誌が出てるでしょう? すると、私の紹介には必ず輪島さんが出てくるんですよ。反対に、輪島さんについて語られる時には必ず私も出てくるし。でも現在の私は、過去よりもこれからが大事。理事長という立場ですからね。いまはすべて、土俵中心、力士中心に考えています。力士あっての協会ですから、常に土俵を見つめています。

輪島 私は、やってる時は夢中だったから勝ち負けの数字にこだわっていなかった。終わってみてはじめて、勝ち越したんだ、と思いました。でもいま、すごく気になるんですけど、理事長から見て、日本人で横綱になりそうなのは? いまの上位は外国人ばかりですが、私らが現役のころは、外国人は高見山だけでした。そろそろ、日本人の横綱が見たいんですけれどね。

北の湖 モンゴル人横綱が3人いますね。それを破るのが本当に難しい。当たり前ですけれども、上位がたくさんいればいるほど昇進は大変なんです。いま、稀勢の里、琴奨菊、豪栄道と3人の日本人大関がいますが、彼らもなかなか上がれず苦労しています。私は新聞のインタビューで“稀勢の里がいちばん賜杯に近い”と答えました。彼は、11勝はするんです。で、さらに2つ勝てると横綱が見えてくる。それを阻むのが3横綱ですね。10勝、11勝というのは大関レベル。横綱は常に、優勝争いに絡まなければなりません。その意味で稀勢の里はまだまだです。彼には毎場所、優勝争いに絡み、13勝以上はしてほしいですね。まずは序盤の取りこぼしをなくし、その上で横綱陣から勝ち星を奪えなければ昇進はありません。現状の横綱3人体制というのは、大関陣には大変な壁だと思いますよ。

輪島 私もいまの日本人力士たちに期待はしていますが、ちょっと淋しいですよね。外国人力士はみんな体が大きくて力も強い。日本人力士はかなり苦戦していると思いますよ。昔はよく、小さい力士が大きい力士を投げ飛ばす相撲が見られたけど、いまは小兵力士自体が減ってしまいました。

北の湖 そうですね。

輪島 いまの相撲はかつてと全然違うから、自分の現役時代と比較することはありません。力士のサイズやパワーが違う。力士の大型化が進んでいますよね。

北の湖 それとあのころの力士はみんな、個性がありましたね。いまは個性派が減っちゃってね。勝つためには大型化はしょうがない面はありますが、個性派力士は土俵を盛り上げますよね。体が大きいと技術的に難しいことが多いんですよ。

輪島 昔の力士は、“自分の型”というのを持っていましたが、いまの彼らは、それがいささか弱い気がします。ところで、最近相撲界はまた人気が出てきました。繁盛してますか?

北の湖 ええ。一昨年くらいからよくなってきたんですけれど、その前は本当に悪かった。でも去年は満員御礼が58回。遠藤や逸ノ城のような人気者が出てきたのもそうですが、純粋に、熱戦が増えていますよね。見ていて面白い取組が増えています。

輪島 私は場所がはじまると、毎日3時間、テレビでじっくり見てますよ。

北の湖 すごい! 3時間見続けるのも大変でしょう。

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