去勢手術せず堕胎薬を注射… 獣医師が明かす「殺処分ゼロNPO」の悲惨な光景

国内 社会 週刊新潮 2018年9月20日号掲載

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堕胎薬で胎児を殺す

〈不妊・去勢手術は、オスは30分程度で2万円台、メスは1時間程度で3万円台で可能だという。ふるさと納税がどんどん集まり、すでに10億円近い資金をかき集めたというのに、なぜ手術代をケチるのだろうか。集めた費用の使い道が、どこかほかにもあるのだろうか〉

 毎日家族連れが訪れる公開のシェルターでは、手厚いケアを一般の人に見せている。だから、ふるさと納税がますます集まる、という図式です。死ぬところだった犬が、こんなに幸せに暮らせる。それならお金を払おう――。そう思うのもわかりますが、内部では日々、殺処分よりはるかにむごい殺戮が行われているのが現実なのです。

 さらにスコラ高原シェルターでは、不妊・去勢手術を行わない代わりに、「アリジン」という堕胎薬を使おうとしていました。この薬は交配後3週間まで使えますが、犬の妊娠期間は2カ月。3週間経てば、胎児はかなり成長しています。そこに堕胎薬を注射しようというのです。実際、この薬を打つと子犬になりかけのドロッとしたものが出てきて、子犬の殺戮に等しい。「殺処分ゼロ」の理念に反するので、私は大西純子さんに、薬品の回収を頼みましたが、叶いませんでした。

引き取りをストップせよ

〈長く繁殖予防活動に携わる、アニマルレスキューシステム基金の山崎ひろ代表が言う。

「先般来日した世界的獣医師ジェフリー・ヤング氏は、“残酷な犬舎を見たことがない人こそ殺処分ゼロを主張できる”と言いましたが、その通りです。同時に“ファイブ・フリーダム”を守ること。これは1960年代に英国で提唱され、いまは人間が飼育するあらゆる動物の福祉の指標として、国際的に認められています。その1は飢えや渇きからの解放。2は不快からの解放。3は痛みや外傷や病気からの解放。4は本来の行動をする自由。そして5は、恐怖や苦痛からの解放です」〉

 ピースワンコは、このすべてに抵触しています。ピースワンコは第一に、行政側からの犬の引き取りをストップすること。そして同時に、施設内の犬の避妊手術をすべきです。

 大西健丞さんに、「犬の引き取りをやめなければ根本的な解決にならない」と伝えましたが、「犬舎の建設が遅れている」という、回答にもならない言い訳をしました。純子さんには「ピースとあなたは犬を虐待していると思います」とハッキリ言うと、びっくりしていました。彼女、スコラ高原シェルターには数カ月に1度しか来ないので、何が起きているのか把握していないのかもしれません。

 私がいた間も、月100頭の勢いで犬が増えていました。スコラ高原シェルターは当初900頭だったのが、私が去る1月には1400頭にまで増えていた。いま、ピースワンコ全体で二千数百頭の犬を抱えていると思いますが、ふるさと納税を集めるために、これ以上、悲惨な環境に置かれ、無駄に死んでいく犬を増やしてはいけません。

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