大地震で“液状化”“水没”“大津波”の三重苦… 住むには危険な首都圏「ハザードマップ」

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津波以上の水

『首都水没』の著者で、元東京都江戸川区土木部長の土屋信行氏はこうも言う。

「07年の新潟県中越沖地震でも、前々日からの台風4号による豪雨で、地盤が脆くなって被害が拡大したのです。大雨と大地震がほぼ同時に来る複合災害は、充分起こり得ることで荒唐無稽な話ではありません」

 スーパー台風と時を同じくして、震度7の直下型地震が本州の大都市を襲ったら――。東京が崩壊する最悪のシナリオを想定すれば、液状化に加えて洪水や高潮による水没被害が顕著だろうと、土屋氏は続ける。

「東京23区の東部、江東区をはじめ江戸川区、葛飾区、墨田区、足立区には海水面より標高が低い『海抜ゼロメートル地帯』が広がっています。このエリアは洗面器の中に住んでいるようなもので、荒川や江戸川に沿って巨大な堤防があり、浸水から街を守っています。ところが東日本大震災では、利根川や荒川などの堤防が約1千カ所壊れてしまった。幸い3月だったので水没の被害はありませんでしたが、台風による高潮や豪雨で水かさが増していたなら、津波以上に止めどなく水が流入していたことでしょう」

 実際、東京都をはじめ首都圏の自治体は、いわゆるハザードマップと呼ばれる被害想定図を作成している。

 だが、その多くはM7前後の地震で起こる「液状化」や「津波」、豪雨による「水没」の最大被害想定を、個々別々に表示しているだけ。これら三つが重なった場合の被害が、一目瞭然に分かるようにはなっていないのが現状なのだ。

 そこで、本誌(「週刊新潮」)が複合災害で起こる「三重苦」を、一つに組み合わせたのが掲載のハザードマップである。

 最も甚大な被害を受けるワーストエリアはどこか。その筆頭は、東京湾に面する神奈川県川崎市川崎区一帯及び大田区の南端だった。多摩川の洪水に加えて、臨海部のため津波や液状化の被害も想定されている。それには及ばぬも「二重苦」に陥るエリアで言えば、東京東部の海抜ゼロ地帯、特に足立区や、内陸部では埼玉県南部の三郷市や八潮市の一部も、水没と液状化に見舞われる。津波の危険度が高い湘南エリアでは、相模川河口付近、平塚市や茅ヶ崎市で洪水による水没被害も懸念されるのだ。

 むろん、ここに紹介した首都圏以外でも、ほとんどの自治体がハザードマップを作成している。ネットからも閲覧できるので、備えあれば憂い無し。いつ来るやもしれぬ災いのために、お住まいの街の被害想定を確認してはいかがだろう。

週刊新潮 2018年9月20日号掲載

特集「『北海道大地震』の次は… 『本州大都市』震度7で何が起こるか!?」より

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