原爆はアメリカ・イギリス・カナダの共同プロジェクトだった 教科書が絶対に教えない「原爆の真実」

国際2018年9月19日掲載

  • 共有
  • ブックマーク

カナダは重要な共犯者

 先ほども述べたように、もともと原爆というアイディアはイギリスが最初に考えたものだ。しかし、イギリスには単独で開発することは困難だった。

「原爆の製造は理論的には十分可能だが、それには巨額の資金、巨大な工場設備、膨大な量の資材と薬品、大量のウラン鉱石が必要だということです。これは当時のイギリスの状況を考えると、ほぼ不可能だといっているのに等しいのです。

 私たち日本人はアジア地域での戦争のことは比較的よく知っているのですが、ヨーロッパ地域での戦争、とくにドイツとイギリスの戦争のことはあまりよく知りません。イギリスは、戦争に勝ったのだから、たいして被害がなかったのだと独り決めしています。しかし、実際には、とくにロンドンなどがドイツ空軍の爆撃で大きな被害を受け、あと少しで降伏せざるを得ないところに追い込まれていたのです」

 こうした事情から、イギリスのチャーチル首相は、アメリカ、カナダとの共同開発という道を選ぶこととなる。アメリカはともかく、なぜカナダなのか。そもそもカナダと原爆とのかかわりはこれまでほとんど語られてこなかった。原爆に関する古典的な研究書が執筆された頃には、関連公文書が機密扱いだったことなどが関係しているという。

「1980年ころからこれらの文書は公開され始めるのですが、英米はもちろんカナダでも、カナダの原爆開発に果たした役割に光をあてる研究はでてきていません。このためカナダ人でさえ、一部の関係者と研究者を除いて、自国が原爆開発と深い関係があることを知りません」

 アメリカ、イギリスにはカナダを仲間に入れなければならない事情があった。

「カナダはウラン鉱石の輸出国でした。コンゴにはもっと質が良く埋蔵量も豊富な鉱山があるのですが、なにせイギリスからもアメリカからも遠く、また宗主国のベルギーがドイツに占領されているということで、混乱状態にあり、なかなか入手が難しかったのです。

 また、忘れられがちですが、原爆製造において減速材の重水はとても重要です。ウラン鉱石に加えてこの重水もかなりのシェアをカナダが占めていました。 こういった複数の要素が重なって原爆開発におけるカナダの重要性が高くなったのです。

 さらに、アメリカの工業地帯といえば五大湖沿岸ですが、この地方は対岸のカナダの工業地帯と結びつきが強いのです」

 現代人の目から見れば、原爆開発などというプロジェクトに関わったことは非難の対象ともなりえるだろう。しかし、当時の彼らにとってドイツと対抗するための兵器の開発であり、また夢の新技術の開発でもある。こうして原爆はアメリカ、イギリス、カナダの3カ国による国際共同プロジェクトとなった。

原爆の独占を狙った英米

 1943年8月19日、アメリカとイギリスは「ケベック協定」という取り決めを交わす。そこにはこうある。

「1.われわれはこの力(agency)をお互いに対して決して使用しない。

2.われわれはこの力をお互いの同意なくして第三者に対して使用しない。

3.われわれはチューブ・アロイズ(原爆のこと)に関する情報を第三者に対して、お互いの同意なくして公表しない。(以下略)」

 要するに、原爆を互いには使わないし、敵国に対して使う際も互いの同意が必要だ、ということである。この協定は、文面上は2カ国の協定だが、実はこの協定に基づいて共同開発にかかわることを決める「合同方針決定委員会」にはカナダの軍需大臣の名前も入っている。つまり事実上、カナダもこの共同開発の当事者となっているのだ。

 その狙いを有馬氏はこう解き明かす。

「なぜカナダ代表を1人いれたのでしょうか。

 それは、このケベック協定のもう一つの目的のためです。ケベック協定は原爆を協同開発すると同時にウラン資源の独占も目的にあげていました。ドイツなど自分たち以外の国に作らせないようにするためです。

 原爆は恐ろしい破壊力をもった兵器なので、自分たちが作ると同時に、敵国(潜在敵国、特にソ連)に作らせないようにすることが重要になります。(略)

 カナダは、ウラン資源を持ち、技術移転によって加工の技術も持っています。カナダを協定に引き入れない限り独占体制は完成しません」

 こうした事実を踏まえていくと、原爆を作ったのはアメリカだ、といった見方がいかに皮相的かは明らかだろう。

「原爆開発は科学者たちの面から見れば国際的プロジェクトだったといいましたが、国の面から見ても、3カ国の協定によって、世界中のウラン資源の独占と分配をも計画した国際プロジェクトだったといえます。

 アメリカは、このケベック協定(その下部委員会の合同信託委員会も含む)のもと、戦争に使用するということでウラン資源を優先的に回してもらわなければ、1945年の夏までに原爆を複数製造することはできませんでした」

 有馬氏がここに示した事実はすべて公文書など1次資料をもとに裏付けのあるものだ。日本人には、あるいは日本の総理大臣は原爆について、アメリカのみならずイギリス、カナダに対しても一言言う権利があるのだ。

(3)、(4)については次回ご説明しよう。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]