「第二の地球」候補は40億個! これから期待できる“新発見” 国立天文台教授の「宇宙」最新レポート

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生命の存在は?

 アメリカが09年に打ち上げたケプラー宇宙望遠鏡は、この分野で大きな成果を上げています。観測した恒星のうち、「第二の地球」候補を持つ星の割合は0・1%ほど。1千個に1個の割合でハビタブル・ゾーンに地球型惑星を持つ恒星を見つけてきました。とはいえ、これら「第二の地球」候補は、1つの恒星に対して1つずつしか見つけられてきませんでした。その点、今回のトラピスト1惑星系のように、1つの恒星の周りに3つも「第二の地球」候補が見つかったのははじめてです。

 この発見を含めて、最近の研究では「第二の地球」候補の数は相当数に上ると考えられるようになりつつあり、恒星の数の4%といわれています。前述した0・1%と比べて、40倍にも膨れ上がったわけです。それでもたった4%と思われるかもしれませんが、銀河系だけでも1千億の恒星があるので、実に40億個の「第二の地球」候補が存在することになります。

 宇宙での新発見は、これからも続くはずです。

 重力波では、来年度以降に日本のKAGRAが検出戦線に本格的に加わります。すると今後もさまざまな重力波源が見えてくることでしょう。文字通り、いまは「重力波天文学」の萌芽期なのです。

「第二の地球」候補でもやがて生命の存在が明らかになるかもしれません。実際には気が遠くなるほど遠方ですから、生命そのものを直接、観察はできません。そこで、間接的な手法が考案されています。先ほど紹介した、「第二の地球」候補が恒星の手前を横切る時の光には、わずかに大気を通過して届く光が混じっているはずです。大気を通過した光は、色の一部が欠けているので、それを調べることで、大気成分がわかります。もし酸素やオゾン(酸素原子が3つ結合したもの)があれば、地球のような生命活動があると考えられるのです。そのためには、まだ現状の望遠鏡では力不足。そこで、われわれはアメリカ、中国、インド、カナダ、日本の5カ国共同で、口径30メートルの超大型望遠鏡TMTを建設する計画を進めています。完成する2020年代後半には、「第二の地球」候補の中で実際に生命の存在が明らかになる可能性があるのです。

渡部潤一(わたなべ・じゅんいち)
国立天文台副台長。1960年福島県生まれ。東京大学理学部天文学科卒。専門は太陽系小天体の観測的研究。2006年、国際天文学連合「惑星定義委員会」の委員となり、太陽系の惑星から冥王星の除外を決定した最終メンバーの一人。

まとめ:渡部好恵(わたなべ・よしえ)
神奈川県生まれ。東レ基礎研究所、蛋白工学研究所を経てライターに。天文雑誌やウェブサイトにて、天文宇宙分野を中心に執筆活動を行っている。

週刊新潮 2018年7月5日号掲載

特別読物「巨大宇宙船を捕捉? 『第二の地球』候補は40億個! 『国立天文台教授』の『宇宙』最新レポート」より

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