満身創痍の「内田裕也」を密着300時間 崔洋一監督が語るドキュメンタリー撮影秘話

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NEW YEARS WORLD ROCK FESTIVAL

――そんなことから崔監督は、裕也氏主催で73年から続く大晦日恒例のロックイベント「ニューイヤーロックフェスティバル(現在はNEW YEARS WORLD ROCK FESTIVAL)」にも通った。

崔監督:映画「遊技」シリーズで出会ってから、遊びに行くようになった。まだ浅草国際劇場で開催していた頃だから4回目くらいから。ほとんど毎年行ってました。だからってワケじゃないだろうけど、それで裕也さんが声をかけてきたのが映画「十階のモスキート」(83年、ATG)の企画。振り返ってみると、ぼくの監督で裕也さんと絡んだ映画って1本だけなんだよね。でも、その後も「ニューイヤーロック~」の映像の演出として呼ばれて、7年間関わったんです。

――「ニューイヤーロック~」はフジテレビで毎年、ダイジェスト放送されている。その映像のため、裕也氏は演出家集団を結成させる。

崔監督:長谷川和彦監督(72)、ぼくに根岸吉太郎(67)、糸井重里さん(69)もいた。裕也さんて、時代に流れに敏感ですからね。新しい力との接点を求める嗅覚が鋭いんです。当時注目され始めた人間5~6人に声をかけて、演出させるわけですよ。大晦日に中継車に入って、映画の人間たちがテレビの人たちと仕事をするわけです。門外漢が関わると、結構刺激になってね、相乗効果を生んだもんです。その仕事が終わってからも、ぼくは毎年じゃないけど、ちょくちょく「ニューイヤーロック~」を見に行っているんですけど、一昨年(2016年)は、裕也さんがロンドンでケガをされて、足が不自由な中、出演していたんです。それを見て、裕也さんに好き勝手喋らせてみたい、ふと、そう思ったんですね。それがこの番組のきっかけなんです。話聞くなら、今のうちだなとも思った。フジテレビに話をすると、すぐに乗ってきた。裕也さんに申し込むと、「うーん……」と言いながらも「ま、いいか」と。付き合いが長いだけに、喜びでもあるだろうけど、表現者・崔への猜疑心もあったと思うんですよ。「勝手なこと、言っていいですよ」と言われながらも、なに撮る気なんだ?って。でも了解もらったからね、1年間、追いかけた。希林さん? 「当然、アタシがやるわよ!」って。

――撮影は昨年(17年)6月から、今年6月まで。300時間に及んだという。

崔監督:見返すだけでも大変ですよ。実はまだ、後編の編集が終わってないの。今日もこれからやるんだけどね。

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