エリートが俗物教祖に心服 「麻原彰晃」の洗脳技巧

社会週刊新潮 2018年7月19日号掲載

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 逮捕以来23年、一度たりとも自らの罪に向き合うことのないままこの世から「退場」した麻原彰晃(63)。なぜ、かような「俗物」にエリート信者たちは付き従ったのか。そのウラには、麻原の「洗脳技巧」があった。

 広く知られているように、麻原の実像は俗物の王だ。

 弟子たちには厳しい禁欲生活を課す一方で、自らは大食漢のメタボ腹。6人の子をもうけた妻だけでは飽き足らず、教団内は愛人だらけで、非嫡出子も多数いた。そもそも一連の事件自体が、「日本の王」になるという我欲を満たすがためで、多くの命を奪ってきた。まさに「煩悩の塊」のごとき人物である。

 他方、それに付き従って、無差別大量殺人まで犯したのは、高学歴のエリートの面々。今回死刑を執行された高弟だけをとっても、遠藤誠一(58)は京大大学院、土谷正実(53)は筑波大学の大学院に学んでいる。中川智正(55)も京都府立医科大を出た医師で、この「理系エリート」3名によってサリンが製造された。早川紀代秀(68)も神戸大、大阪府立大の大学院に学び、その知識を武器調達などに活かしている。

 言わば、オウム真理教の犯罪は、理系の「頭脳」がその持てる能力を、麻原の邪(よこしま)な「欲望」に捧げたことで初めて成立した。

 そこで生まれる最大の謎が、なぜ彼らは麻原に盲目的に従ったのか、ということだ。合理的思考を極める競争に勝ち抜いた立場から見れば、麻原の欺瞞性など、すぐに見抜けたはずなのだが……。

「その大きな要因のひとつは、弟子たちの“神秘体験”にあると思います」

 とは、フォトジャーナリストの藤田庄市氏。宗教をフィールドとする藤田氏は、オウム事件に関心を持ち、裁判傍聴や死刑囚への面会を繰り返してきた。

「法廷や面会では、少なからぬ弟子たちが、修行の際の神秘体験について述べていました」

 例えば、これも今回刑が執行された新実智光(54)は、

〈ヨーガの行法や瞑想などを20時間続け、4時間の睡眠〉

 の状況下で、

〈(麻原と)一緒に瞑想しているのを観想すると、冷えていた体がほてり始め、光が増してきた。裸電球のような形の黄色の光の中に自身が溶け込み瞑想をしていた〉

 との体験を語っている。

「当時は、超能力やオカルトがブームになっていた時代。こうした体験を経れば、それに興味を持つ若者は、超能力を得た、麻原は本物だ、オウムは本物だ、と信じ込んでしまう」(同)

 では、このような神秘体験を生ぜしめた麻原は、優れた宗教家だったのか。

 答えはもちろん否である。

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