1兆3千億円市場「民泊」に新法で「やめる人」「もぐる人」 撤退ビジネスも活況

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1兆3千億円市場「民泊」に新法で「やめる人」「もぐる人」――吉松こころ(下)

 潜在的な市場規模が、実に1兆3121億円まで拡大するとの試算もある民泊ビジネス(情報通信総合研究所調べ)。だが拡大にともなうトラブルは後を絶たず、昨年7月には宿泊客を暴行したとして、ホストが準強制性交未遂罪で起訴される事件が起きている。さらには、民泊禁止マンションの管理組合が、経営を続けた部屋の所有者と仲介業者に3千万円を超える損害賠償を求める裁判を起こすケースも。6月15日の新ルール登場で、日本の民泊はどうなるのか。

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 逆風が強まる分、民泊からの撤退組が後を絶たない。

 例えば、地元情報が中心の無料広告掲示板「ジモティー」で「民泊」を検索すると、1785件ヒットし、「民泊 家具」に絞っても568件(6月11日現在)出てくる。当の掲示板にはこうある。

〈民泊用家具家電一式の出品です。2LDKで運用してました。購入金額は40万円。(中略)すぐに民泊を始めることができます〉

 一式を買ったのは1年前で、落札希望額は12万円とされていた。

「稼ぐだけ稼いだからそろそろやめようかなと……」

 そう打ち明けるのは、東京・中央区役所から徒歩2分の場所で違法民泊を経営するホストである。

 築50年、エレベーターも付いていない6階建て中古ビル。3~5階にある28平方メートルほどのワンルームを4年に亘って民泊として貸してきた。築地、銀座へのアクセスの良さから常に予約でいっぱい。1部屋1万〜1万5千円で、例えば近隣のシティホテルだと3万円はするものもあり、ゲストにしてみれば安い。一般の賃貸住宅として貸せば、賃料はせいぜい月10万円前後。他方、この民泊は多い月には、1部屋40万円以上を稼ぎ出すカネのなる不動産だった。

「ちょっと疲れたね。ゲストの予約が入るたびに掃除の手配をしたり、トイレットペーパーを補充したり、夜中に鍵無くしたって騒がれたりね。とはいえ予約が少ない月は心臓がキリキリするし。これから規制も厳しくなるっていうし、早いとこ、切り上げようと思っているんです」(同)

 とはいえ、「エアビー」こと「Airbnb」(民泊仲介サイト)に載せていれば、3〜4カ月先までどんどん予約が入る。儲けが目に見えてわかるから、なかなかやめられないのだ。

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