リリー・フランキーさんが語る「『金ペン堂』万年筆」の魅力 イラストには「なまえペン」!?

エンタメ 芸能 週刊新潮 2018年6月7日号掲載

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 小説やエッセイなど文章を書く時はペリカンの万年筆、イラストを描く際は三菱鉛筆の「なまえペン」と、ここ25年ぐらいかな、ずっとそう決めています。

 最近はモノを書く仕事が少なくなってますが、長い文章は必ずペリカンの万年筆。ワープロ、パソコンは一切使いません。小説『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』ももちろんそう。

 以前はシャーペンを使ってたんですが、筆圧が強いせいか腱鞘炎になってしまった。たどり着いたのが万年筆でした。もっとも万年筆なら何でもいいわけじゃない。東京・神保町の「金ペン堂」のもの限定です。ここの万年筆は店主のおじさんが1本1本、4時間ぐらいペン先を慣らしてから売りに出している。だから、すっごく書きやすいんです。

 使うインクも決まっていて、ウォーターマンのブルーブラック。この色で文字を書いていると自然と気持ちが乗って抒情的になってくるんですよね。ただ一つ困るのは、真面目な文章の時はいいんですが、“ポコチン”なんて出てくるオチャラけたエッセイもつい雰囲気のある文字になってしまうこと……。

「金ペン堂」の万年筆は贈り物をする際にも重宝しています。今は文章を書くのも皆パソコンの時代。だからあえて、万年筆を贈る。案外、喜ばれるんですよ。主演を務めた、カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作「万引き家族」の是枝裕和監督にも贈ってあげるつもりです。

 文字の万年筆に対してイラストを描くのに使うペンは、三菱の「なまえペン」。これ、子供が上履きや筆箱に名前を書くための100円台で買えるごく普通のペン。およそプロが使う道具とはほど遠いものですが、やはり強いこだわりがあります。

 1990年代前半、イラストの仕事が多くなった頃、いろんなペンを試していました。でもどれもイマイチしっくりこなかった。ある時、子供が「なまえペン」を使っているのを見て何気なく借りたんです。使った瞬間、ビビッときました。イラストを描く際、僕は下描きを一切しないんです。だから線を引いた時のペン先の走りにすごく気を使う。軸のしなり具合、インクの濃さ、このペンは全く申し分なし。以来、これ以外考えられなくなりました。

 常時、家には200本ほど置いてありますかね。だいたい1本で10枚ぐらい描くとペン先が潰れてしまい、新しいものと交換します。古いものも捨てずにベタ塗用にとっておきます。

 テレビアニメにもなった「おでんくん」のキャラクターは、全てこのペンから生まれたものです。

 ペリカンの万年筆と三菱の「なまえペン」、これらの筆記具は、小学生の時からずっと愛用している専用の筆箱に入れ、どこに行く時でも肌身離さず持ち歩いています。

リリー・フランキー
1963年福岡県生まれ。写真、作詞作曲などの分野でも活躍。主演した「万引き家族」が全国公開中。