「わが子を他人に預ける」ことに罪悪感? 悩みがちな母親に「ぐりとぐら」の中川先生がアドバイス

ライフ 2018年4月5日掲載

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わが子に泣きながら「ごめんなさい」

 この春もまた、数多くの待機児童が出た。読売新聞の調べでは、申請した子どものうち川崎市で35%、さいたま市で30%が入園を認められなかった。待機児童の多い78自治体で4人に1人が保育園に入れなかったことになるという(一次選考の結果、3/22付)。

 一方で、厳しい保活戦線を勝ち抜いた母親たちもいる。
 まもなく慣らし保育のスタート、園から配られた「通園のための持ち物リスト」を見ながら、ひとつひとつ新生活の準備を進めているだろう。
 お昼寝用シーツにタオル、着替え、通園バッグ……。だが都内在住のMさん(30代)の表情は驚くほど沈み込んでいた。

「妊娠してすぐ保育園探しを始めたので、保活期間はとても長かったです。正直、就職活動よりも消耗しました。だからこそ、第2希望の認可園に入れて大喜びしたのですが、次第に『これでいいのか』って疑問がふくらんで……」

 その理由は、Mさんのわが子がまだ0歳と小さいことだ。

「去年の冬に生まれた娘は、ようやくハイハイを始めたばかり、離乳食も始めたばかり。この子を本当に預けていいのか、私が会社にいる間、一体なにをしているのだろうと心配で。
 子どもは慣れるものだよと言いつつも、内心かなり不安な様子の旦那にも、義理の両親にも申し訳なさを感じます。いっそ私さえ家にいればと、罪悪感でいっぱいで。

 でも一番は、まだこんなに小さなこの子に申し訳ないんです。夕方機嫌が悪くなる『たそがれ泣き』もあり、そんなときに保育園のことを思うと、ごめんねと言いながら私も涙が止まりません。
 もちろん入園できなかった子も沢山いると分かっていますが、これまでにない気持ちにしばられて、通園準備もなかなか進みません」

24時間、一緒にいることはないのよ

 保育園や幼稚園に子どもを預けることは、親子にとって大きな変化。特に子どもにとっては、生まれて初めて経験する「試練」になるだろう。
 だが、「お母さんと子どもは24時間、一緒にいることはないのよ」とアドバイスするのは中川李枝子さんだ。
 
 中川さんは名作絵本「ぐりとぐら」シリーズや『いやいやえん』などの童話の生みの親としても、17年間保育士として勤めたことでも知られる作家。
 子どもたちから無我夢中で教わったことをまとめたという著書『子どもはみんな問題児。』(新潮社刊)で、次のように語っている(以下、同書より引用)。

「母と子はとにかく一緒にいればいい、というものではありません。
 お仕事を持って働いているお母さんが時間を大切に有効に使っていることや、離れていてもいつも子どものことを思っていることは子どもも分かっています。
 たとえ、一日のうちで一緒にいない時間のほうが長かったとしても、母と子の信頼関係はゆるぎません。
 歩けるようになった子どもは、うちに閉じこもってなんかいられません。仲間同士で遊ばせることが大事です」

「お母さんの信頼を裏切るわけにはいかない」

 普段の生活では、お母さんが子どもにとっての安全地帯という中川さんは、自身の経験をもとに続ける。

「保育園では先生が安全地帯です。けんかも安心してできる、そしてくたびれたときは先生のそばにくっついてなでてもらう。
 子ども同士でも、けっこう神経を使ってくたびれて、ふっとひとりになりたくなるのです。すると私のそばにくる。特に用もないのになんとなくぺたぺたくっついて、ちょっとエネルギーを溜めてまた遊びにもどるということがよくありました」

「(中川さんが勤めていた「みどり保育園」の)天谷園長先生は、わが子を赤の他人に預けるにはすごく勇気がいると言っていました。保育園を信頼しているから子どもを預ける。私たちは、お母さんの信頼を絶対に裏切るわけにはいかないのよ、と」

 子どもにとって、保育園は初めての場所。だが親にとっても、保育園は育児のプロである保育士や、子育て仲間と出会う初めての場所なのだ。
 心配はつきなくても、お母さん自身が「子育ての仲間が増える」と前向きに捉えること、新しい生活スタイルを楽しみにする気持ちを持ってみることも大切だ。

デイリー新潮編集部