武術家が指南する長生き健康法――全身のバランスを整える「五行の気」とは

ライフ週刊新潮 2018年3月15日号掲載

  • 共有
  • ブックマーク

「心」と「脾」

 心(火)は「鷂子鑽天(けいしさんてん)」。心は胸骨のことで、血流の循環が促されます。私は不整脈などで調子が悪くなると、この型で治してしまいます。中指と連動し、火は上に昇るので、この型も上に伸びる動きをします。

(1)これまでと同様に足を開き、片足のつま先を真横に向け、踵を浮かせて足を伸ばす。もう片方の足に重心をかけ、重心をかけた側の腕を心臓より上までゆっくり持ち上げ、指を真上に向けます。このとき腰から上は、真横に向けたつま先側にひねっています。大切なのは胸をグッと伸ばすこと。息をゆっくり吸いながら脱力し、腕を伸ばしましょう。中指をストローにし、天から気を吸い上げていくイメージです。

(2)元に戻すときはゆっくり大きく息を吐き、腕を胸の前に戻し、両足も戻して軽く腰を落とす。反対側も同様の動きを繰り返します。上への動きなので、アッパーなど下から上へ殴る動きにつながります。最小限の動きで強い力を出せるのは、この心の気のように、体幹を整える型を体得しているからなのです。

 最後に脾(土)の型「獅子滾球(ししこんきゅう)」。親指と連動し、胃脾の血流をよくする効果があります。

(1)両足をこれまでより広く開いて立ち、自分から見て、時計の「3」の位置から、時計回りに上半身と両腕を大きく回します。(2)そのまま1周し、親指を軸にする気持ちで大きく息をして回します。(3)集めた気を左側に押し出すように、息を吐きながら腕を伸ばします。このとき左足を腕を伸ばす方向に踏み込み、右足は左足に寄せる。同じ動きを左右行います。

 お腹が伸びるように体全体を回すこと。お腹で体当たりするときや棒を振り回す際に使う動きです。

 さて、五行はどれか一つではなく、全身のバランスを整えるため、全種類を一度に行うことを勧めます。

 中国拳法は天地からエネルギーを吸い取るという考え方なので、吸いたい方向に手を伸ばします。体内にガソリンを入れるイメージで、実際、そうすると身体が伸びて気持ちがいい。そして、気持ちがいいということだけを考えたほうが長続きします。

 四肢を脱力させることで、ムチのようなしなやかな動きが伝わるのが五行の動き。体幹トレーニングが流行ですが、手にまで柔軟な動きを伝えられなければ、弾の出ない鉄砲と同じです。五行に毎日取り組むと、強い力が出る。騙されたと思ってやってみてください。血流もすごくよくなります。

(3)へつづく

山田英司(やまだ・えいじ)
1955年生まれ。開成高校卒、早大教育学部中退。早大中国武術研究会初代主将。82年より松田隆智氏から各種中国武術を学び、伝統武術の研究にも勤しむ。フル・コム代表として多くの格闘技雑誌を創刊。BUDO-STATION主宰。

特集「『武術家』3人が指南! 万病を遠ざける『究極の長生き健康法』」より

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]