「R-1ぐらんぷり」濱田祐太郎優勝を、ホーキング青山はどう見たか

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 6日、ピン芸人ナンバー1を決める「R‐1ぐらんぷり」の今年の優勝者に選ばれたのは、ほぼ全盲の芸人、濱田祐太郎だった。車イスの芸人、ホーキング青山はこの結果をどう見たのか。彼自身、何度かR‐1ぐらんぷりに挑戦し、予選敗退した過去があるという。障害者芸人の“先輩”としての感想をホーキングに聞いてみた。

「ネタそのものは、障害を持つ芸人のある意味で王道というか、私が車イス芸人としてやっていた『障害者ネタ』の盲目版みたいなものなので、正直に言えば、個人的にはすごく目新しさを感じたわけではありません。

 でも、濱田さんは、以前に出ていたNHKお笑い新人大賞といい、今回のR‐1ぐらんぷりといい、ちゃんとしたお笑いの舞台に出て、しかも見事に結果を出していることは、素晴らしいことだと思うし、いよいよこういう人が出てきたかと思ってもいます」

 実はホーキングは、新著『考える障害者』では、ある種の「特別枠」のような形でのみ活動している障害者芸人に対して、かなり厳しい意見を述べていた。「バリバラ」(NHK‐Eテレ)で行なわれている障害者(正確にはマイノリティー全般)のお笑いコンテストについて、彼らのはお笑いではなく「障害を知ってもらうための一つの啓蒙活動」とした上で、こう綴っている。

「気になるのは、この企画をM-1グランプリになぞらえて『S1』と称していたり、ゲストに呼んだプロの芸人さんたちにそれなりに演者を褒めさせたりしている点だ。一歩間違えると、笑いを取ることを第一義としてやっていないにもかかわらず、まだやり始めたばかりで当然技術的にも劣る彼らに、すでにいっぱしの芸人になってしまったと錯覚させかねないことはどうにもひっかかるのだ。

 彼らの多くがやっているのが、『啓蒙活動』なわけで、どこまでいっても『お笑い』『演芸』としては評価できないし、もっと言ってしまえば話芸である漫才を言語障害を抱えながらやろうということ自体、無理があるし、それ自体話芸でもなんでもない」(『考える障害者』より)

 今回の濱田の漫談を「啓蒙活動」などと言う人はいない。話芸として面白かった、単純に笑えたという評価が多い。だからこその優勝なのだろう。ただし、「障害者芸人」ならではのハンデはこれからもつきまとうだろう、と自身の経験を踏まえながらホーキングはこう語る。

「車イスに乗っていて、見るからに障害者というビジュアルだと、登場した途端にお客さんが引いてしまい、いわばマイナスからのスタートになります。そのマイナスをゼロにしてさらにプラスにまで転じて笑いを呼ぶのは、2~3分では厳しい、と思うようになってきたので、私の場合は、だんだん長く話せる落語のような話芸を志向するようになりました。

 濱田さんの場合は、そこまで障害者っぽいビジュアルではないですが、白杖を持って現れたとたんに、戸惑う人が出てくる可能性はある。現にR‐1ぐらんぷり決勝の1回戦でのお客さんの最初の反応はそういう感じでした。でも、今回、そこからの彼の巻き返しは素晴らしかった。

 とはいえ、これからも今回のような戸惑いやさらに同情、憐れみのような目で見られることはあるでしょう。これが芸人にとっては一番タチが悪いんですが」

 芸人にとっては深刻な「同情問題」。ホーキングは24年間やってきて、いまだに悩んでいるところだという。そのための妙案はないかを聞いてみると、少し真面目な顔つきでこんな答えが返ってきた。

「ストレートに『同情するな!』『笑ってくれ』なんて言ったところで、他人の気持ちは簡単に変えられませんからね。

 障害者が珍しい存在であればあるほど、戸惑いや同情されやすいという面はあると思います。だから、できるだけ芸人に限らず多くの障害者が社会に出て、珍しくない存在、見慣れた存在になるようになれば、『見た目のハンデ』は解消されていくんじゃないか、そうなっていけばいいなあ、と思うんですよね。

 見慣れたところで、顔のマズさは変わらないから、お前はハンデがあるままだ? 大きなお世話だよ!」

デイリー新潮編集部

2018年3月13日掲載

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