“三菱自動車”株まで手放す「三菱重工」は“火の車”

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7743億円の損失

“我が子”を売ってまで500億円超を手にする三菱重工だが、“これで懐は心配ナシ”とはいかないようだ。経済誌の重電メーカー担当記者が指摘するのは、

「三菱重工の“祖業”は、造船事業。今年1月1日付で、半世紀ぶりに子会社『三菱造船』を復活させました。実は、三菱重工の造船部門が大型豪華客船の建造で2500億円を超える大損失を出して、客船事業から撤退した結果に過ぎません。この損失がなければ、三菱自動車株を売却しなくてもMRJの開発資金を調達できたと思います」

 さらに、先行きにはもう1つの暗雲が垂れ込めているという。三菱グループに属するメーカーの役員はこう不安を口にする。

「今後、三菱重工は大型豪華客船事業で被った損失よりはるかに大きな損害を抱えるリスクがあるのです。4年前、三菱重工は日立製作所と共同で火力発電事業の会社を立ち上げました。その後に三菱重工主体の会社となり、南アフリカの事業で、約7743億円の損失が発覚しました。三菱重工は損失負担を日立製作所に請求しましたが、“法的根拠に欠ける”として突っぱねられたのです」

 結果、三菱重工は昨年7月31日、ビジネス上の問題解決を目的に設立された、日本商事仲裁協会に仲裁を申し立てている。

「日本商事仲裁協会の仲裁結果は、法的拘束力があります。仮に、三菱重工の主張が認められなければ全額を特別損失として計上しなくてはならない。三菱重工は今期決算で純利益800億円を予想しているが、仲裁結果次第では純利益が一気に吹っ飛ぶどころか、屋台骨を揺るがしかねません」(同)

 最近、安倍総理の海外トップセールスに同行するのは日立製作所の中西宏明会長ばかり。“国家”との距離が、仲裁結果に影響しなければいいのだが。

週刊新潮 2018年2月22日号掲載

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