ホンダジェット開発リーダー「跳び起き カレンダー裏に図を描いた」――開発を大きく前進させたスケッチ公開

社会

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 昨年暮れ、第一号機を顧客に引き渡したホンダジェット。受注も100機を超えて、滑り出しは順調のようだ。

 このジェット機の外見上の特徴は、主翼の上にエンジンが載っていることだ。航空機に詳しい人たちは、かなりの違和感を持ったはずだ。エンジンを主翼の上に置く前例がなかったわけではなかったが、技術的な問題から「タブー」とされてきた側面もある。

 このあたりの事情については、『ホンダジェット 開発リーダーが語る30年の全軌跡』(前間孝則著)に詳しく書かれている。

――確かに過去、航空機メーカーが、主翼の上にエンジンを置くコンセプトを研究し、開発を試みたことはある。しかし、空力の面からは干渉抵抗が増えたり、空力弾性の面でも問題が生じてしまう。結局、これらの技術的問題は克服が難しいとして断念。やがて「タブー」となって定着してしまったのである。

ホンダエアクラフトカンパニー社長の藤野道格氏(写真提供/ホンダ)

 だが当時新型機開発のプロジェクトリーダーの藤野道格(現ホンダエアクラフトカンパニー社長)は、その業界の常識を鵜呑みにはしなかった。タブーに挑み、いかにしてその技術的ハードルを越えられるかを考え続けていたのだ。(前掲書より)

 藤野は仕事中はもちろん、自宅に帰ってもこのことを考え続けた。そんなある夜、布団に入って寝ようとしたときだった。こういう形なら……と閃いた。

「初めて具体的に思いついたのです。忘れてしまわないうちに書き留めようと、周りを見回したが、近くに紙がなかった。かけてあるカレンダーに目が留まったので、前の月かなんかの紙を破って、その裏にボールペンでスケッチを描いたのです」

藤野氏がカレンダーの紙に描いたスケッチ(『ホンダジェット 開発リーダーが語る30年の全軌跡』より)

 このカレンダー裏のスケッチがホンダジェットの開発を大きく前進させた。過去の偉大な発見のエピソードを彷彿とさせる、永遠に語り継がれそうな「スケッチ・エピソード」だ。

デイリー新潮編集部