異状死の9割解剖されず… 石原さとみ熱演で分かった日本の「アンナチュラル」

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死人に出す金はない

 それだけではない。解剖医で千葉大附属法医学教育研究センターの岩瀬博太郎センター長も、

「これまでの医療ドラマとは一線を画したリアル感があり、日本における法医学の現状を、かなり忠実に描いているように思います」

 と語る。では、現実の法医学の世界はどんな状況だというのか。現在、日本では年間約130万人の死亡者が出ているが、そのうち、約14%の17万人が、「異状死」として警察に届けられている。

「この異状死で亡くなった人のうち、事件性の有無を調べるために司法解剖されるのは4〜5%、約8000体です。事件性がないと判断された死体を扱う行政解剖を含めても、全体で12%程度。つまり異状死の約9割が、解剖もされずに荼毘に付されていることになるのです」(同)

 となると、犯罪が闇に葬られている可能性も十分、あり得ることになる。

「この解剖率は、先進国の中では極めて低い数字です。米国は約60%、オーストラリアで約55%、スウェーデンにいたっては約90%といわれています。ドラマの中でも語られていましたが、日本は諸外国に較べて、法医学の分野では後進国といっていい」(同)

 なぜ、ここまで解剖率が低いのかと言えば、現在、法医学者の医師は全国で約150人、明らかな人材不足に加えて、設備にかける予算も足りないからだという。

「法医学に対する国の考えは死人に出すお金はないということなのでしょう。解剖すれば、生きている人がよりよく生きることができるはずなのに、その発想が役人や多くの政治家に欠如している。給与も臨床医に較べればはるかに安いことも影響しています。国にはドラマに登場するUDIラボのような独立機関としての『研究所』を作ってほしい。このドラマが注目され、こうした実態に少しでも警鐘を鳴らしてくれるように願っています」(同)

 石原さとみ、責任重大!

週刊新潮 2018年2月22日号掲載

ワイド特集「雪の華」

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