放置すれば腸に穴が開く! 大腸のカビが「がん」「認知症」の原因だった

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カビが菌糸に変身すると

 では、カビはどうやって腸壁に穴を開けるのでしょうか。一つは、カビが付着した部分に起こる炎症が原因であるケース。炎症によって腸粘膜のバリア機能が低下し、細胞と細胞をつないでいる接合部(タイトジャンクション)が緩んで、腸管壁に小さなすきまが開いてしまいます。

 もう一つのケースは、カビが二形性菌であることと関係しています。条件次第で酵母にも菌糸にも変身するのです。酵母はビール酵母やパン酵母のように、糖などをアルコールと炭酸ガスに分解しながら成長する菌。一方、細長い糸状の菌糸は腸管壁を突き抜け、穴を開けてしまいます。ちなみに菌糸は口腔内でも、口腔粘膜に穴を開けます。

 近年、 リーキーガットが、ぜんそくやアトピーなどアレルギーの原因になるうえ、免疫機能に影響をあたえて、自己免疫疾患やがんを増悪させることもわかってきました。またリーキーガットの陰には、ディスバイオーシス(腸内毒素症)が存在します。腸内環境が悪化し、腸内フローラのバランスが崩れた状態のことです。

 ディスバイオーシスやリーキーガットの症状は多岐にわたります。こんなことまで!?と思われるものまで、じつは原因が腸の環境にあります。

 腹部膨満感、げっぷ/ドライアイ/身体のほてり、傷口が治らない/ぜんそく、アトピー、花粉症/口臭、虫歯、歯周病、舌苔/頭痛、脳のくもり、倦怠感/肛門や膣の刺激、発赤/短期記憶喪失、集中困難/リウマチ、関節痛、筋肉の痛み、しびれ/耳鳴り、めまい/キレやすい/不安感……。

 このように神経系にも影響するほか、腸内環境が悪くなると、インスリンの分泌を促すインクレチンが出なくなります。すると血糖値を下げるインスリンも出にくくなり、高血糖や糖尿病のリスクが増す。糖尿病予備軍の人こそ、腸を整えることが大切です。

 また、カビが繁殖すると免疫系の細胞が攻撃するため、腸粘膜も破壊されて炎症が起こり、この炎症を鎮めるため、副腎からコルチゾールというホルモンが分泌されます。これはストレスに対抗するホルモンですが、腸に炎症があるとそれを鎮めるために使われすぎて、ストレスに対抗できなくなります。一方、副腎もコルチゾールを出しつづけて疲弊し、ついにはコルチゾールを分泌しなくなります。結果、疲労、引きこもり、うつにつながります。

水銀にも注意

 水銀についても触れておく必要があります。カビには水銀とくっつく性質があり、カビが死ぬときや、水銀を詰めこんで飽和状態になったときに、メチル水銀として放出します。

 水銀は神経細胞を破壊し、人の細胞からエネルギーを生みだすミトコンドリアの機能も低下させます。人にはがん化した細胞や、がんになりそうな細胞を除去し、がんを抑制するアポトーシス(細胞の自殺)という機能が備わっています。じつはミトコンドリアは、アポトーシスの誘導に大きくかかわっているのです。

 ですから、カビがいると結果として、がんのリスクが高まるといえます。また、水銀によって中枢神経が破壊されると、アルツハイマー型認知症のリスクも高まってしまいます。

 口内にアマルガムと呼ばれる銀歯がある人はさらに注意が必要です。この合金は50%前後の水銀をふくみ、銀歯から蒸発した水銀が腸に届くと、カビの細胞壁に取りこまれます。アマルガムがある人は、水銀が体内に入らないよう安全に除去してくれる歯科医院に相談されることを勧めます。

――つづく(下)では、腸のカビの繁殖を抑えるポイントを紹介する。

ファストロ滋子(ふぁすとろ・しげこ)
歯科医師。岩手医科大卒。慶応義塾大学病院麻酔科を経て、日本歯科麻酔学会認定医に。静脈内鎮静法、全身麻酔下での術中・術後の全身管理、一般歯科に従事。現在、院長を務めるオーラル ウェルネス クリニックに予防医療サロンを併設。

週刊新潮 2018年1月4・11日号掲載

特集「驚愕の警告 放置すれば腸に穴が開く! 検査で発見・除去できる!! 『大腸のカビ』が『がん』『認知症』の原因だった――ファストロ滋子(歯科医師)」より

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