こんなものいらない!「4K・8Kテレビ」が売れて喜ぶのは安倍首相と総務官僚だけ?

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NHKは6チャンネル化

「4Kの集荷台数は伸びてはいますが、これらは買い換えによるものでしょうね。中間報告の予測は大ハズレと言っていい。今年(17年)は全体で800万台近く売れると予測していますが、このままだと500万台も無理でしょう。およそ5000万世帯の日本では、年500万台が買い換え需要と見られていますから、2台目のテレビが売れていないのです。テレビは一家に1台の時代へ戻り、個人はスマホやタブレットに取って代わられたのだと思います。そこにはテレビからネットへの移行が考えられます。戦艦大和が戦闘機により撃沈させられたように、大艦巨砲主義のテレビ政策は、ネットの進化という戦闘機的システムにより凌駕されます。そして買い換え需要にすら満たないのは、皮肉なことにアベノミクスで女性の社会進出が進み、昼間にテレビが見られなくなったため、テレビそのものの寿命が延びていることも考えられます」

「1台目を買い換えるなら、どうせなら次は4Kにしておくか」と言う方も多いだろう。しかし、値段はまだ高いし、現在の地デジが見られなくなるわけでもないのである。

「地上波がいつ4K・8Kになるかは未定です。18年12月にスタートするのは、NHK、BS朝日、BS-TBS、BSジャパン、BSフジで、これらは現在BSが見られる環境にあれば4Kテレビに買い換えるだけで見ることができます。ただし、それをじっくり見ているのが民放トップの日本テレビ。BS日テレは4Kに参加はしますが、スタートは19年12月 なんです。画質が向上したところで、広告収入が増えないというのは、地デジ化の時に証明されていますからね」

 トップ企業は冷静である。問題は4Kで何が見られるかだが、

「そうです。NHKは現在も地デジで総合とEテレ、BSではBS1とBSプレミアムの計4チャンネルがありますが、さらに2チャンネル増えて6チャンネルになるわけです。果たして流す番組があるのかどうか」

 ただでさえ、受信料など払いたくなくなるバラエティ番組などが増えているNHKである。ここに4K、8K用の機材まで増やして何がやりたいというのだろうか。ましてやNHKの目玉である8Kや4KではあってもスカパーやWOWOW、ショップチャンネルなどは電波が異なるため、従来のアンテナでは受信すらできないというのだ。

 ちなみに12月に発売されたばかりの世界初の8K対応テレビ(シャープ AQUOS8K)は70型100万円(税抜き) である。シャープは記者会見で、こう発言している。

「 8Kは医療や防犯、教育など、あらゆる分野で新たな価値を生み出す。業界に先駆けて続々と商品を投入し、市場を切り開く」

 まるで一般家庭向けではないと言っているようにも聞こえる。なにせ、幅1564×奥行375 ×高さ967mmで重さは45kg もあるのだから、「うちには入らない、いらない」という方も多いのではないだろうか。さらに「テレビを買っただけでは見られない」と鈴木氏は言うのだ。

「総務省も今頃になって広報活動をしていますが、電波には右旋、左旋、平たく言えば右回転のものと左回転のものがあり、従来のテレビ電波は全て右回転でした。これまでのアンテナでは左回転の電波は受信できないのです。また機種やケーブル環境によってはチューナー、分配器、分波器、ブースター、ケーブルまで交換が必要と注意しています。古い住宅は軒並みダメでしょうね」

 総務省は20年の東京五輪までに4Kの世帯普及率は50%、25年には100% と予測している。もちろん、官民が一体となり、「今後は4Kしか売りません」なんてことになれば、普及率は達成できるかもしれない。

 だが、それは国民の求めるテレビ放送なのだろうか?

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週刊新潮WEB取材班

2018年1月7日掲載

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