こんなものいらない!「4K・8Kテレビ」が売れて喜ぶのは安倍首相と総務官僚だけ?

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テレビで見たいのは画質でなく内容

 その高精細映像を知らしめようと、17年3月に8K解像度で撮影したドラマ「囲むフォーメーションF」を制作したのが電通 である。

「天井をぶち抜いた9部屋のセットを丸ごと俯瞰で撮影し、『ホラ、こんなに引いて撮影しているのに、一部屋一部屋はハッキリ、くっきり見えるでしょう?』というもの。でも、人間の眼なんて9部屋同時に見比べられるものじゃない。自分で一部屋ずつ集中しないと何をやっているのか分かりませんよ。だったら、アップで撮ればいいだけです。映像は試験放送で拝める というのですが、8Kを導入した一般家庭はほとんどないから、当面はNHK放送センターなどで見るしかありません」

 とはメディアアナリストで次世代メディア研究所の鈴木祐司氏(59 )だ。

「似たような話は、ハイビジョンに移行する頃にもありました。2002年の日韓共同開催のサッカーW杯 の中継です。NHKチームはBSハイビジョンで、走査線525本の地上波はインターナショナルチームの撮影する従来のアナログ波での中継でした。その結果、BSに加入していた視聴者のほとんどが、アナログ中継のほうを見たんです。NHKチームはサッカー中継に慣れていなかったこともありますが、当時のハイビジョンは画質が良すぎて、急激なカメラの移動は船酔い状態を起こすといわれ、ズームを避けた。対してアナログ中継は手練れのスタッフがやっているから、決定的瞬間を逃さなかった。当時、NHKでは“引きの美学”とか言っていましたけど、いくら球場が美しく撮れても、スポーツを俯瞰で撮ったって面白くないんです。スポーツに限らず視聴者を惹きつけるのは、高精細ではなく番組の内容なんです」

 鈴木氏はNHKに32 年間務めた業界のベテランでもある。では、2018年に始まる4K・8K放送はどうなるのだろうか。

「そもそも『スーパーハイビジョン』と名付けた4K・8Kを言い出したのは、放送技術のトップ集団を自負するNHKの放送技術研究所 で、1995年 のことです。技術者は世界に先駆けた高精細放送を目指し、NHK本体が目指すのは民放との差別化ですから、両者は一致して研究に邁進します。それから失われた20年を経て、第2次安倍政権が“アベノミクス”を打ち出したのが2013年 のこと。首相の意気込みに総務省が貢献できるモノがないか、と目をつけたのが4K・8K放送だったのです」

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