「AI社会でもエグゼクティブ職はなくならない」という意見、どう考えるべき?

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あなたの仕事を奪う「AI社会」3つの誤解――鈴木貴博(3)

 AI社会の到来で消滅の危機にあるのは、ブルーカラーではなくホワイトカラーの仕事であるとここまで紹介してきた。ロボット工学では人間の指先などの再現が困難である一方、高度な専門知識や資格を必要とする知的な仕事ほど、早い段階で人工知能に置き換わっていくのだという。

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 人工知能についての最後の誤解は「とは言っても高給取りがやっているエグゼクティブな仕事は最後まで人工知能にはとって代わられないだろう」という意見だ。

 これは技術的に言うと「高性能汎用人工知能」というものが完成するかしないかという議論だ。汎用人工知能とは人間と同じように学習し思考しすべての問題に対して判断を下せる能力を持つAIのことだ。それが完成しなければ確かにエグゼクティブな仕事はAIには置き換わらない。「人工知能によってかなりの仕事が消滅したとしても、本当に創造的な仕事や、責任をともなう判断をする仕事だけはなくならない」という主張は、この汎用人工知能が登場するのにまだまだ時間がかかるはずだという観測に基づいている。

 ではあなたはどう考えるべきだろうか? 私はこの議論はたとえば「南海トラフ地震が来るか来ないか」という議論と同じスタンスで捉えるべきだと主張している。「起きはしないかもしれないが、起きたときのことを考えて備えるべきだろう」と考えるのだ。

 実際、これから先20年の間、グーグルやアマゾンといった巨大企業が年間数千億円の研究開発費を投下してその研究を進めるので、汎用人工知能技術がこの間、かなりの進化を見せるのは間違いない。ではそれがどのような存在になるのか。いくつか例を挙げて説明しよう。

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