安倍総理“子育て支援”ゴリ押し3000億円 割れる経済団体

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 ここ数年、自民党の集金マシーンと揶揄されている経団連が、また安倍総理のゴリ押しを二つ返事で受け入れた。その要請内容とは、経済界からの約3000億円の拠出だ。経団連の榊原定征会長(74)のあまりのイエスマンぶりには、“身内”からも批判の声が上がっている。

 12月8日、“子育て支援”を含む約2兆円の政策パッケージが閣議決定された。全国紙の政治部デスクによれば、

「景気のいい2兆円のパッケージを作るのに約3000億円の財源が不足している。そこで安倍総理は、経済界に穴埋めの資金を拠出して欲しいと要請したのです」

 安倍総理の要請があったのは10月末。経済三団体のうち経団連の榊原会長と、経済同友会の小林喜光代表幹事(71)は即座に快諾したが、中小・零細企業が主要会員である日本商工会議所の三村明夫会頭(77)だけが、反対していた。

「総理からの要請後、榊原会長は“経済界の総意として、3000億円拠出を受け入れる”と表明しようとしました。ですが、三村さんの意向を受けた日商の事務方が“うちは了承したわけではない”と“経済界の総意”の文字の削除を求めたのです。閣議決定の3日前に開かれた日商会頭の記者会見でも、三村さんは“経団連の意見が、経済界すべての意見ではない”と、語気を荒らげて反対していました」(同)

 さらに、三村会頭は閣議決定当日も子育て支援が重要な政策だとは理解を示しつつ、日商のHP上でこう綴っている。

〈中小・小規模企業の負担が過重にならないように特別な配慮を強く望む〉

中小・零細企業は大打撃

 三村会頭が特別な配慮を望むのには、既存の“子ども・子育て拠出金”なる社会保険料が関係しているのだという。日本年金機構広報室が説明するには、

「子ども・子育て拠出金は、児童手当の原資になり、厚生年金などの社会保険料と同じく、我々が徴収しています。ただし、厚生年金とは違って、事業主が全額負担しています」

 つまり、この拠出金は社員数や経営内容に関係なく、企業が従業員へ支払う給与と賞与のそれぞれに保険料率をかけた金額を負担しなければならない。経済誌の財界担当記者がいうには、

「安倍総理は、子ども・子育て拠出金の保険料率を引き上げることで3000億円を捻出しようと考えています。ですが、今年4月分より保険料率は0・2%から0・23%に引き上げられたばかりで、企業の今年度拠出額は約4000億円に上る見通しです」

 仮に、3000億円の拠出が正式決定すれば、企業の負担額は今年度の2倍近くに上る。史上最高益を記録する大企業はまだしも、人件費高騰などで資金繰りに苦しい中小・零細企業には大打撃だ。

「今回ばかりは、三村さんの主張が正論で、榊原会長は拙速だったといわざるを得ないでしょう」

 こう語るのは、経団連に加盟する化学メーカーの元役員だ。

「経団連の企業会員が1360社なのに対して、日商は125万社。榊原会長は国内ほぼすべての企業に関係する重要案件を、他の経済団体と十分話し合わずに即決してしまった。一方の三村さんは新日鐵住金の名誉会長も務め、安倍総理とゴルフをしたり、会食を重ねる仲。そうした関係を超えて、中小・零細企業の代弁者として発言したことで、評価はうなぎ上りです」

 来年5月に任期満了を控え、レームダックと化した榊原会長。いっそ、三村会頭に次期会長をお願いしてみたら。

週刊新潮 2017年12月21日号掲載

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