“ババア”という罵りの意図は? 騙し合うことと信じ合うことは表裏一体『監獄のお姫さま』第7話

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騙し合いと信じ合いの交錯!

 さて、話を今回のストーリーに戻そう。前回、服役中に検事・長谷川信彦(塚本高史)から獄中交際を申し込まれたカヨは、戸惑いながらも彼を「のぶりん」と呼び、楽しそうな日々を送る。

 その中で、元女囚たちは着々とカヨの入手したノートに板橋への復讐計画を綴ってゆく。

 そんな中、31番「女優」こと大門洋子(坂井真紀)が刑期満了で出所した。
2017年、板橋の前で彼女はついに過去を語り始める。彼女は2007年収監の古株で、ミュージカル俳優の追っかけをしており、ストーカー規制法で任意同行されたのち、追っかけ資金を得る詐欺を繰り返したため7年という異例の長さの懲役を受けていたのだ。

 出所後、演劇への興味を失ってしまった自分を振返って洋子は言う。「刑務所でのハードで目まぐるしい日々が私を変えてしまったんだ。塀の中の出来事が切実すぎて面白すぎて、絵空事の演劇の世界に入り込めない」と。

 洋子が出所したあとも、女囚たちの復讐計画は練られ続けていた。しのぶと板橋の婚前旅行で、パラセーリング直前に板橋が「高所恐怖症」を理由にペアでの飛行を断ったことで、板橋の恋人殺しの実行犯、タイ人「プリンス」と板橋が二人きりになる時間が訪れたことに元女囚たちは気づく。ちなみに2017年現在「プリンス」はタイの刑務所で8年服役中だ。元女囚たちと同じ雑居房で暮らしていたタイ人のリン(江井エステファニー)がまだこの復讐劇に登場していないことを考えると、今後のリンの再登場はそうした国際的な場面に発展したものになるかもしれない。

 だが、バカが付くほど(この“バカ”も筆者の本意ではありません。書かないと伝わらないから書いているだけです)うっかり者のカヨは、復讐ノートをなくしてしまう。ノートを拾ったのは、ふたばだった。暗闇の中、無言でノートをコピーするふたば。怖い。もはや味方か二重スパイか、完全にわからなくなってきた。

 ニュースでは、ふたばが情報提供したことにより、元女囚たちのコードネームが放送されるに至った。「もう誰も信じられない……」とコンビニへの買い出し途中でカヨはつぶやく。

 その頃、監禁場所にふたり残された板橋と千夏の間では、ハニートラップ演技合戦が繰りひろげられていた。もはや誰が誰を騙しているのか、ノリにノッている「騙し合い合戦」は、「誰が誰を信じると決めるか」によってしか、止められないところまで来ている。

西野由季子(にしの・ゆきこ)(Twitter:@nishino_yukiko) フリーランサー。東京生まれ、ミッションスクール育ち、法学部卒。ITエンジニア10年、ライター3年、再びITエンジニアを経て、永遠の流れ者。実は現代演劇に詳しい。新たな時代に誘われて、批評・編集・インタビュー、華麗に活躍。

2017年12月1日掲載

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