30代「東芝」社員の転職日記 残す1社の結果は、そして迎える“さらば東芝”

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彼女の反応は…

〈9月28日・木曜日 今日、東芝メモリの売却がようやく決定した。揉めていたウエスタンデジタルではなく、後から名乗りを上げた「日米韓連合」の方だ。舵取りを担っていた米投資会社「ベインキャピタル」は3年後をメドに再上場を計画しているというが、同時に“東芝”の名前は消えるという。社内には安堵感が広がっているが、メモリー事業なくして今後の明るい展望が開けるとは思えないのだが。

 8月下旬に最終面接を終えた電機メーカーからは、まだ通知が来ない。2次、最終面接と手ごたえがあっただけに、不安と同時に苛立ちもピーク。このまま会社に残ることになれば、また給与が減ることは確実だ。将来結婚して、子供も欲しいが、生活は今より苦しくなるはずだ。〉

〈10月6日・金曜日 やったーー。“採用”の電話が電機メーカーから来る。面接官からは年収を提示され、“うちでの年収は、東芝以上を考えている。地方の支社で頑張ってもらうが、実家も近くなるので悪いことばかりではないだろう。君には、期待しているよ”と過分な言葉をいただく。彼女とはきっと別れることになるが、転職を決意する。〉

〈10月7日・土曜日 彼女と会って、転職を打ち明ける。関係を続けるのは絶対に無理だと思っていたら、彼女から“これからは遠距離恋愛になるね。私も、休みには必ず遊びに行くから”と笑顔。彼女は遠距離恋愛になっても、大丈夫なのか。嬉しくて涙が出そうになる。〉

〈10月10日・火曜日 朝一番で辞表を提出する。上司は驚いた顔をして“なぜ、もっと早く相談してくれなかったのか”と絶句した後、“会社がこんな状態だから引き止め難いけど、もう一度考え直さないか”と。かつて、一緒に仕事をした管理職と社内で偶然会ったので、退職を打ち明ける。彼は、“君とは、一緒に仕事をしたかった。もう一度、考え直す余地はないかな”と涙声でいってくれた。先日とは別の意味で、自分も涙が出そうになる。〉

〈10月13日・金曜日 自分の退職を聞きつけた同期数人が、送別会を開いてくれた。裏切り者の自分に対して、みんな笑顔で“よかったな”とか、“寂しくなる”といってくれた。優しい言葉が心に刺さる。

 2次会の話題は、神戸製鋼所のデータ改竄。みんな“神戸製鋼は潰れるんじゃないか”などと無茶苦茶いっていたが、週刊新潮が今年1月にうちのデータ捏造を報じたことを忘れたのだろうか。〉

〈10月20日・金曜日 今日が東芝社員として、最後の出社日。この1週間、お世話になった先輩社員や同僚、そして取引先への挨拶回りで終わった。いつもより早い時間に自宅を出ると、日頃見慣れた風景がすべて新鮮に見えるのはなぜだろう。退職した先輩社員たちもこんな思いを抱いて“最後の日”を迎えたのだろうか。送別会に駆けつけてくれた同期の1人が“管理職も退職して少なくなったから、偉くなれるチャンス”といっていたが、自分にはその自信はないし、将来への不安で押し潰されそうだった。もう、後戻りはできない。さらば、東芝。〉

週刊新潮 2017年11月23日号掲載

特集「最終面接の結果やいかに!? 『東芝』30代社員のトホホな『転職活動日記』」より

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