女性プロデューサーがタブーに斬り込んだ「石つぶて」ドラマ化の波紋

エンタメ週刊新潮 2017年11月16日号掲載

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舌を巻いた元二課刑事

 山口は刑事ドラマのファンで、派手に見える民放の刑事ドラマにもタブーのあることがわかっている。スポンサーの意向や時代の風向きを先取りするところがある。

 それに、放送免許付与の権限を持つ総務相の意向を窺うような雰囲気も、今の放送界にはあって、官邸や中央省庁、大企業を実名で叩くことを避けている。報道はもちろん、ドラマ作りも忖度や自主規制と無縁ではないのだ。

 ところが、何度か話すうちに、彼らがタブーの間隙を縫ってドラマ作りをしてきたことを知る。有料放送のWOWOWにはスポンサーの束縛がないという利点があり、民放ができない実話やタブーに挑戦することを存在意義の一つとしている。

 岡野自身がWOWOWのプロデューサーとして初めて手掛けた作品は法廷で係争中の題材だったし、2年前にヒットさせた『連続ドラマW しんがり〜山一證券 最後の聖戦〜』も、山一證券の実名と秘話を露出して業界関係者をうならせた。銀行、証券のスポンサーを戴く民放なら「山一の名も匿名で」と腰を引くところだという。

 そして、手荒に扱うと壊れそうな二人が実はなかなかのやり手で、男社会の中でもまれた“職人”であることもわかってくる。岡野はドラマ制作会社で助監督やアシスタントプロデューサーを務めた後、WOWOWに転じて16本のドラマを手掛けている。今回も原作が完成する前に動き始め、『石つぶて』の制作を会社に訴えて、監督には『しんがり』に続いて若松節朗の起用を、と提案している。

 一方の永井は現場制作の責任者だが、しゃにむに働いて自律神経失調症に陥ったり、新たな体験を積もうと1年間休職し、マッサージの仕事を勉強したりしたこともある。二人ともエリートとは無縁な人生で、どこか開き直ったところがある。

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