WOWOWでドラマ化、「外務省機密費詐取事件」を暴いた刑事たち

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“外務省事件”

 捜二OB会のもう一つの話題は、外務省機密費詐取事件と刑事たちのドラマが11月5日からWOWOWで放映されることだった。『連続ドラマW 石つぶて〜外務省機密費を暴いた捜査二課の男たち〜』という計8回の連続ドラマである。

「俺は原作を読んだぞ。情報係の中才(なかさい)(宗義)主任や第四知能犯にいた敏さん(鈴木敏主任)が出てるよ」

 という声をきっかけに、「それは何だ」「ドラマの主役は佐藤浩市が演じるらしい」と座は一気に盛り上がった。二次会でもそれが酒の肴になる。金髙は「いろんな情報が出過ぎている」という意見だったが、近藤春菜の父親はこう振り返った。

「俺もあの事件のときに捜査班を手伝った。事務局のようなことをやっていたよ。刑事総務課などからも応援がいっぱい来たから、刑事の配置やら証拠品、書類の整理やら雑用やらで大変だったな」

 外務省事件は、外務省と総理官邸の闇を突いたものだ。直接の容疑は、元要人外国訪問支援室長の松尾克俊が約9億8700万円の機密費を詐取(立件額は約5億円)していたというものだったが、詐取されたその機密費は、外務省から総理官邸に上納された資金の一部で、機密費の存在と上納のからくりは固く秘匿されてきた。

 それを二課情報係の中才が苦心惨憺して突き止め、外務省や内閣官房、他省庁など735人の関係者から聴取する大掛かりな疑惑に発展した。このため、捜査二課の半数近くにあたる162人の捜査員が応援に駆り出され、刑事たちの共通体験となっている。

 だが、話題の“主役”はOB会に姿を見せなかった。原作である拙著『石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの』には、中才、その上司で情報係長の中島政司、事件を総括した第四知能犯第三係長の萩生田勝、取り調べにあたった鈴木の4人が実名で登場するが、鈴木以外は出席しなかった。それまで中才や中島は毎年のように顔を出していたのにだ。(文中敬称略)

(下)へつづく

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清武英利(きよたけ・ひでとし)
ノンフィクション作家。1950年生まれ。75年、読売新聞社入社、社会部記者として活躍。2011年6月からは読売巨人軍専務取締役球団代表兼GMなどを務めた。同年11月解任。

週刊新潮 2017年11月16日号掲載

特別読物「女性プロデューサーがタブーに斬り込んだ! 『石つぶて~外務省機密費を暴いた捜査二課の男たち~』ドラマ化の波紋
――清武英利(ノンフィクション作家)」より

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