WOWOWでドラマ化、「外務省機密費詐取事件」を暴いた刑事たち

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タブーに切り込んだ「石つぶて」ドラマ化の波紋――清武英利(上)

 2001年に露見した外務省機密費搾取事件を描く清武英利著『石つぶて』。警視庁捜査二課の刑事が実名で登場するこのノンフィクションが11月5日からWOWOWで連続ドラマ化された(日曜22時)。女性プロデューサーがタブーに切り込んだ秀作の余聞をお届けする。

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 お笑い芸人「ハリセンボン」の近藤春菜の父親(63)は、警視庁刑事部捜査二課で人望を集めた温厚篤実な元刑事である。2年前に警視庁を退職したが、捜査二課時代は、第二知能犯の主任(警部補)で、もっぱら選挙違反事件の情報収集と摘発に心血を注いでいた。

 捜査一課が殺人や強盗など凶悪犯を追って、世間によく知られた組織なのに対し、二課は、贈収賄や詐欺、横領、選挙違反など知能犯罪を追及する地味な部署である。潜行する職務であるうえ、今秋の衆院選のようにいきなり衆院解散、選挙公示という事態もあり、さらに大型の公務員犯罪捜査の応援もあるため、捜査員は多忙で休みも不規則だ。

 もともと職人気質の刑事の多くがそうなのだが、春菜の父親も娘たちと休日が一緒になるときがない。春菜の弁によると、小学校の運動会にはとうとう姿を見せなかった。ようやく中学校1年生の運動会の日に、父親は休みが取れ、張り切ってビデオカメラを買って来た。

 ところが、子供の行事に慣れていないので、ビデオ撮影に適した場所が取れない。それでも奮闘してビデオカメラを回したのだが、帰って見てみると、春菜に似たポッチャリ型の同級生ばかりが写っていた。

「うわっ、自分の子をなんで間違えるの」

 春菜が責めると、父はしゅんとして自分の部屋に行ってしまった。そんな父の姿を、春菜は何度かテレビ番組で語っている。

 二課刑事(デカ)の家族はたいてい、「うちは母子家庭のようなものだった」とこぼすのだが、彼女の父親も、他人と娘の見分けがつかないほど家族を放り出して働いた。ただし、その激務と使命感は仲間以外にほとんど知られることがない。春菜も「刑事」という以上に父の仕事の本質を本当に知っていたかどうか。

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