地銀統合に公取からの“待った” 金融庁「森長官」の怒り

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国策と法令順守

 確かに、今後の人口減を考えると地銀のみならず、地域金融機関が多すぎるのは事実だ。森長官が推進する再編を“国策”だと考える銀行業界トップは少なくない。だが、その一方で“市場の番人”を自認する公取委が法令順守を貫く姿勢を批判することも難しい。

「森さんの怒りの矛先は公取委だけでなく、FFGと十八銀行にも向けられています」

 こう囁くのは、金融庁の中堅官僚だ。

「2年前に開かれたFFGと十八銀行の統合会見では、公取委ときちんと話を詰めているように思えませんでした。そこで融資シェアを低下させるために、店舗の統廃合や他行への債権譲渡を打診するよう内々に提案したのですが、具体的に動いた形跡がほとんど見当たらない。それで森さんも“こんなことで公取委が統合を承認してくれると思っているのか”と、激怒したと聞きました」

 経済ジャーナリストの福山清人氏は、今回の“経営統合白紙”が及ぼす影響は九州だけには止まらないと指摘する。

「FFGと十八銀行の経営統合と並行して、他の地域でも地銀の統合や合併計画が進んでいます。例えば、新潟県の第四銀行と北越銀行も経営統合に合意しているが、県内で2行の融資シェアは合計で50%を超えてしまう。公取委が法令順守のスタンスを崩さなければ、今回と同じく統合は承認されない公算が大きい。地銀の体力低下を考えれば、法的整備を急ぐ必要があるでしょう」

 昨年11月28日、十八銀行側の統合責任者だった59歳の専務が、自宅マンションから飛び降り自殺を図っている。この難事を解決するために、森長官の手腕が期待されているのだ。

週刊新潮 2017年8月3日号掲載

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