日本郵政巨額損失「またしても粉飾では?」 東芝崩壊を予見した男が警鐘

企業・業界 2017年5月2日掲載

海外子会社で発生した損失約4000億円を決算に計上することを決めた日本郵政。(写真・日本郵政グループ本社)

 東芝に続き、海外子会社で発生した損失約4000億円を決算に計上することを決めた日本郵政。最終損益は400億円の赤字に転落し、民営化以来初の赤字となる。2015年に6200億円で買収したオーストラリアの物流子会社トール・ホールディングスについて「楽観的な見方をし過ぎた」「ファイナンシャルアドバイザーから買収額について指摘はなかった」と現経営陣は反省の弁を述べたが、単純な経営者の判断ミス、甘い見通しが招いた惨事だと片付けてよいのだろうか?

「これは判断ミスではなく『飛ばし』の可能性もあるのでは」と疑問を呈する元経済記者がいる。『震える牛』『ガラパゴス』など社会問題に鋭く切り込む作風で人気の作家・相場英雄さんだ。相場さんは過去の取材で知ったある手法について言及した。

■バブル崩壊で生じた負債

東芝の崩壊を予見した相場英雄氏

「兜町担当の記者だった20年ほど前、日本企業が本業とは関係のない海外企業を異常な高値で購入するケースが目立った時期がありました。その背景として、バブル崩壊で生じた負債を、のれん代(買収された企業の時価評価額と買収価額との差額)に紛れ込ませて粉飾するという手法があることを教えてくれた情報提供者がいました」

 決算対策のため、含み損が生じた資産を市場とかけ離れた価格で第三者に転売し、損失が表面化しないようにすることを「飛ばし」と呼ぶ。

 相場さんは2015年の東芝「不適切会計」問題に着想を得て、その裏側にある事情を推測しながら小説『不発弾』にまとめた。作品の内容は、まさに現実の東芝が直面していた問題とピタリと符合しており、「東芝崩壊を予見していた」と話題を呼んでいる。

■日本郵政の闇

『不発弾』の主人公・古賀は凄腕の「飛ばし屋」。バブル崩壊以後に実際に使われた様々な損失飛ばしのテクニックを駆使し、企業の損失を巧みに粉飾して隠蔽するさまが描かれる。日銀のマイナス金利政策に喘ぐ地方銀行の運用担当係を相手に古賀は語る。「今後、運用の透明性を求める声が国会で高まるのは必至です。そのときのために――」。

 企業はなぜ、損失の表面化を怖れるのか。「組織で働いているのはみんなサラリーマン。誰だって、自分が責任者である期間は巨額の損失など明らかにしたくない。だからこそ、あらゆる手段を講じて損失の計上を先送りするのです」。とはいえ先送りを続けていれば、負債は膨らみ、いつか爆発する。「それこそ東芝のように、実際に粉飾に関わった歴代経営者たちが悠々自適の老後を送る一方、現役世代が窮地に追い込まれる……そんな事態がこの先どんどん増えると思います」。

 物語のラストでは、粉飾決算に手を染めた巨大電機企業と、日本最大の元半官半民企業グループの恐るべき関係が示唆される。
はたして相場さんは「東芝崩壊」に引き続き日本郵政の闇をも見抜いてしまったのか? 冒頭のトール社との提携を進めたのが、東芝の代表取締役社長、会長を歴任し、その後も10年以上相談役を務めた西室泰三前日本郵政社長だったことを忘れてはならない。

デイリー新潮編集部