「東芝」vs.「監査法人」泥沼闘争を実況中継 調査費用20億円が水の泡…

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「東芝」vs.「監査法人」泥沼闘争を実況中継(上)

「これ以上、何を調べることがあるのですか。するべきことは全部やった。このままだと上場廃止になってしまいますよ!」

「いや、アメリカのほうが了解してませんから……」

 東京湾を見下ろすようにそびえ立つ巨大電機メーカー「東芝」本社。その高層フロアの一角で東芝の担当者と公認会計士は、ここ数カ月、何度も激しいやりとりを繰り返していた。

 東芝が今、いかなる窮地に陥っているのか、全国紙経済部の記者が解説する。

「2年前に不正会計問題が露見した東芝ですが、ご存じのように昨年暮れ、子会社・米ウエスチングハウス(WH)でまたもや巨額損失が発覚します。その結果、債務超過になり、これが来期も続くと上場廃止になる。それを回避するために、稼ぎ頭の半導体部門を売りに出したのですが、途中で横槍が入るなど、うまくいっていない。しかし、今の東芝は、それよりも切迫した問題を抱えている。監査法人との冷え切った関係です。このまま“冷戦” が続けば、来期どころか8月には上場廃止になってしまうかも知れないのです」

 なぜ、東芝と監査法人は険悪な関係にあるのだろうか。本題に入る前に、若干の説明が必要だろう。

 そもそも、我が国の上場企業は、すべて公認会計士(監査法人)による「監査」を受ける決まりになっている。ところが決算に不正があったり、監査のための十分なデータがない場合、決算は認められない。最悪の場合、企業は上場廃止になってしまう。

「上場廃止になると一番の痛手は資金調達ができなくなってしまうことです。たとえば保険会社や銀行がお金を貸してくれなくなる。会社の信用力がガタ落ちになるので、公共事業の入札から外されることも考えなくてはいけません」(経済ジャーナリストの磯山友幸氏)

 その東芝は、2016年度の通期決算を今も認めてもらえていない。「PwCあらた監査法人(以下PwCあらた)」が、データが足りていないという理由から「意見不表明」という形でサインを拒んでいるのだ。

 PwCあらたが東芝を監査するようになったのは昨年1月。不正会計問題で外された新日本監査法人に代わっての“ご指名”だった。PwCあらたはアメリカの大手監査法人「プライスウォーターハウスクーパース」と提携関係にあり、頭3文字のPwCがそれを意味している。

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