節税マンション投資が子供たちのトラブルの火種に… 失敗の実例に学ぶ「相続税対策」

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■養子だけで「8人」

〈次に取り上げるのは、このところ注目を集めている「養子縁組」である。今年1月に最高裁は、相続税の節税目的による養子縁組が「直ちに無効とは言えない」との判決を下したが――〉

 たとえ最高裁が認めても、実際の相続の現場で養子縁組がトラブルの温床となっているのは事実です。

 養子縁組によって相続人の数が増えれば、当然ながら基礎控除額も引き上げられ(相続税の基礎控除の計算に含められる養子の数は最大2人まで)、相続税全体を圧縮することができるわけですが、兄弟間の取り分に差が出てしまうリスクがある。

 たとえば、父母と長男一家が同居していた、ある家庭では、父親が「長男の妻には世話になったから」と彼女を養子にしました。しかし、この養子縁組を他の相続人に相談しなかったことで問題になった。

 父親に悪気はなくとも、他の子供たちの法定相続分が減額されるのは明らか。長男も、他の兄弟に対して「うちの妻のために取り分を減らしてよ」とは言い出しづらい。しかも、長女や次女にしてみれば、義姉が実の姉になるわけで心理的なハードルも高い。

「サザエさん」一家のように、相続人全員がひとつ屋根の下に住み、意思疎通ができていればいいのですが、現実には、核家族化の影響で兄弟間のコミュニケーションはほとんどありません。ですから、「父親がボケた状態の時に、無理やり養子縁組させたのではないか」と疑われてしまったのです。

 相続対策での養子縁組の場合、8割方は他の兄弟に内緒にしているのではないでしょうか。親が相当な資産家で、遺産分割トラブルが目に見えていると、長男は妻だけでなく自分の子供も父親の養子に入れてもらう。それを知った次男が同じことをして、父親が亡くなった時には養子だけで実に8人を数えたケースもありました。

 最悪の場合、兄弟間での訴訟に発展しますが、ひとたび養子縁組されてしまうと、申請書類の筆跡が完全に父親と違ったり、通院記録から明らかに認知症を患っていたと断言できない限り、無効にはならないことが多いようです。

 結局、養子縁組は一家としては得をするものの、家族が遺産分割について話し合っておかないと不和だけが残り、裁判沙汰すら招きかねないのです。

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(3)へつづく

特別読物「5人に1人が課税対象!『骨肉の争い』が倍増!! 失敗の実例に学ぶ『相続税対策』――高原誠(フジ相続税理士法人代表社員)」より

高原誠(たかはらまこと)
2005年に税理士登録。06年にフジ相続税理士法人を設立。相続に特化した専門事務所の代表税理士として、年間約600件の相続税申告・減額・還付業務を取り扱う。

週刊新潮 2017年4月20日号掲載

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