「ルペン」仏大統領ならルンペンに 日経平均大暴落

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〈ふらんすへ行きたしと思へども、ふらんすはあまりに遠し〉とは萩原朔太郎の詩だが、フランス大統領選が遠い国の話だと高をくくってはいけない。決選投票に残った極右政党・国民戦線のマリーヌ・ルペン女史(48)が勝てば日本経済にも暴風が吹き荒れるという。

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 事前に予想されていたとはいえ、4月23日に行われた大統領選挙で、前経済相のマクロン氏に次いでルペン女史が2位につけたことにフランス国内の動揺が収まらない。かの国では1回目の投票で過半数を獲れなければ、上位2名が決選投票で決着をつける。5月7日の投票で、もし、ルペン女史が勝てば、ちゃぶ台返しも厭わない政権が誕生することになるのだ。

 そもそも国民戦線は、フランスでも“鼻つまみ者”の政党だった。

「国民戦線はルペン女史の父であるジャン=マリー・ルペン氏が作ったのですが、レイシストの政党と見られていたのです。ナチスによるユダヤ人虐殺を“些末な出来事”だと言い放ったり、ユダヤ人歌手に“窯に入れてやる”と言って訴追されたこともあります」(パリ特派員)

 それでも、労働者層から一定の支持を得ていたのだが、党を躍進させたのが娘のルペン女史である。

「2年前にルペン女史は父親を党から追い出して、レイシストのイメージを薄めることに腐心して来ました。5年前の大統領選挙では3位となり、政権を脅かす存在になったのです。女史自身は弁護士出身で、これまで2回結婚しており、3人の子供がいる。現在は独身ですが、恋人は国民戦線の副党首です」(同)

 在仏ジャーナリストの広岡裕児氏によると、国民戦線が支持を集めるようになったのには、理由がある。

「今のフランスにおいて、自由競争を煽る新自由主義は蛇蝎の如く嫌われています。本来は国家社会主義でやってゆくのがフランスだったのに、既成の保守政党が新自由主義に走ってしまったものだから、その隙間をルペンが埋めたのです」

 ルペン女史が「フランス版トランプ」と呼ばれる所以(ゆえん)だが、その国民戦線の党是は、反イスラムと反EU。実現すれば、日本も無傷では済まない。

■円高ユーロ安に

「フランスがEUを離脱するようなことになったら、そのインパクトはブレグジットより甚大ですよ」

 とは、シグマ・キャピタルの田代秀敏チーフエコノミストだ。

「フランスはEUの創設国です。イギリスがポンドを使っていたのと違って通貨もユーロですから、離脱するとユーロが一気に不安定になってしまう。すると、円高ユーロ安が急激に進み日経平均株価が急落してしまいかねないのです。何が怖いかというと、日本の株価は円高イコール下落ですから、AIによるアルゴリズム取引によって、全銘柄が売られてしまいます」

 もちろん、このままルペン女史が突っ走るのかというと、それほど甘くはない。

「中道派のマクロンは幅広い支持層を持っており、決選投票では極端な有権者を除いてマクロンに投票する人が増えると見ています」(広岡氏)

 とまれ、決選投票ともなれば、それまでの敵同士が手を握って思わぬ結果になるのはよくあること。まさかの「ルペン大統領誕生」は、アベノミクスに浮かれる日本を一気にルンペン気分に陥れてしまいかねないのだ。

ワイド特集「蝶よ花よと女の舞」より

週刊新潮 2017年5月4・11日ゴールデンウイーク特大号掲載

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