“Amazonお坊さん便”時代に、現役の僧侶が「お坊さんはつらいよ」と嘆く2つの理由
お坊さんはつらいよ
ついにお坊さんも通販で手配できる時代がやって来た。2015年12月より「Amazonお坊さん便」なるサービスがスタート。一律35,000円で法事、法要でお坊さんを呼ぶことができるようだ。全国400名の僧侶と取引しているため、ユーザーがどこに住んでいても高額な交通費も発生しないという。安くて、便利で、気軽である。
このように、「花八層倍、薬九層倍、お寺の坊主は丸儲け」と言われていた時代とは、お坊さんの位置づけが変わってきているのだろう。特に地方は高齢化や過疎化などの影響で檀家も減少しているわけで、そうなれば寺院経営はもちろん逼迫、仕舞に潰れてしまうケースも少なくない。実際の厳しい懐事情が、『お寺さん崩壊』(水月昭道・著)で明かされている。(以下同著より引用)
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■手取り200万円以下
「坊主丸儲け」言説に日々直面し、困惑しているお寺さんは全国的に少なくない。一例として水月氏が住職を務める寺院(※門徒戸数(檀家数)は概ね150軒程度)の財務状況が下記である。
(1)「お布施(=葬儀、法事、法要)」の年間収入はざっと「450万円」
(2)「年会費(=護持費)」の年間収入が「150万円」
(3)「オプション収入(=納骨堂加入料、墓石販売、駐車場経営など)」はやっていないので「0円」
年間総額収入が約600万円なら、普通のサラリーマンと変わらないじゃないかと思うが、ここから本堂やお庭、庫裡といった伽藍関係の営繕を行い、法要などに関する諸経費を賄い、さらに光熱費や人件費などを捻出し、加えて本山や教区といったところへの賦課金(上納金)を納めると残りは200万円程度、それが純粋な給与だという。しかもここから所得税などの税金が引かれるとなると、なかなかのワーキングプアぶりだ。
■仏教はサービス業ではない
寺院の台所事情も変化してきているようだが、Amazonお坊さん便の誕生からみても分かるように、住職に対する地域社会からのニーズもかつてに比べ、高い期待値を有しなくなっているようだ。限られたサービスを提供してくれればそれでよい、というむきも大きく、ある住職は「最近の檀家さんは時間厳守で願います、とか、お経は短めで結構ですから、とか平気で仰ってこられるので困惑します」と嘆く。
無論、現代はこうしたニーズに問答無用で応えねばならない辛い時代なわけだが、それは同時に、仏教がまさにサービス業を模した形で提供されようとしていることを示している。まるでAmazonなどのネット通販から好みのモノを選び取るように、人々は欲しい“仏事商品”をコレと指名買いすることに、もはやさほどの疑問も感じない社会が到来している。しかし仏教とは本来、役に立つかどうかを見据えながら買う商品ではないと水月氏は指摘する。
苦しい懐事情に加え、世間からのニーズの変化――。「お坊さんはつらいよ。」と嘆く彼らの辞書に、「坊主丸儲け」なんて言葉は存在していないようだ。