「タリウム女子」は法廷で「検事も弁護人も殺したい」 大メディアの「19歳殺人鬼」顔・実名隠しに何の意味があるのか

社会週刊新潮 2017年3月2日号掲載

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■「逃走ルート」を確認

 親友に投与した翌日、大内は間髪を容れず、〈テンションが高くなってノンストップ状態になっていました〉(第10回公判)と、先述の男性をターゲットにした。それでも、6月上旬頃からは警察を意識し、

〈逃走ルートを確認したり、逃走資金を用意したり、あとは追っ手に誰かが来た時の目つぶし用に水酸化ナトリウム水溶液を用意したりしました〉

〈自転車で山形に出ようと思っていたので、仙台から通じる道を確認しました〉

 というのだ。男性が快復して学校に姿を見せると、

〈恐怖感のようなものを感じ〉〈タリウムに対して人間は耐性ができるのかもしれないと思いついて、2回目の投与をしたらどうなるのか、とても興味を持って投与を決めました〉

 同じく観察を開始し、

〈もしかしたら死ぬかもしれないということを思って、まあそうなったら、観察結果として受け入れようという気持ちになりました〉

 先の記者が言う。

「16日の第13回公判に出てきた大内の母親は、中学に進む頃、ママと呼んでいたのが突然『今日からあんたを呼び捨てにする』と言い出し、注意しても聞き入れなかったと明かしました」

“萌芽”は見てとれたわけで、

「翌日の第14回では、高校の別の同級生が出廷。高1の時、大内が神戸の酒鬼薔薇事件やオウム事件についてたびたび話題にするので、冗談半分で『いつか犯罪をやらかすんじゃないか』と聞いたところ、『やるなら少年法に守られている間にやりたいんだ』ということを級友のいる前で口にした、と証言したのです」

 同じ日、6件すべての公訴事実を包括した被告人質問で大内は、検察官から、

〈国語のノートにタリウム中毒の症状について書いたか〉

 と聞かれ、薬品を投与した2人の症状について記したと認めるとともに、

〈2個体での実験結果〉

 と表したと述べた。理由については、

〈実験動物という感覚からそう書きました〉

 なおも検察官が、

〈2人は人体実験だった?〉

 そう質すと躊躇なく、

〈そうですね〉

 と返答。極め付きは、殺人願望の“矛先”である。同日、弁護人から、夏に鑑定留置されていた頃に記していた日記の中身を尋ねられ、

〈人を、職員を殺したい。弁護人でもいいみたいなことを書いた気がします〉

〈本当に人を殺したいという、たまらないというか書かずにはいられない状態だったと思います〉

 と明かし、質問者に、

〈私を思い浮かべている?〉

 などと聞かれる始末。実際に検察側の質問でも、

〈殺す対象は無制限か〉〈はい〉〈すると刑事や検事、裁判官、裁判員、傍聴の人も含むのか〉〈そうですね〉

 そうした応酬の後、

〈(取調べの検事に)直接殺したいと言ったことはあります〉

 と言い出し、

〈ネクタイで首を絞めて殺す夢を見たと話しました〉

 ひるまず検事が、

〈(取調べの)検事がネクタイをしてきたら本当に絞めたかったの?〉

 そう畳み掛けると即座に、

〈だと思います〉

 検事はあらためて、

〈あなた、どこまで真剣に話してるの?〉

 これに大内は溌剌と、

〈結構、本気な部分もありました〉

 さらに検事は、家裁の審判で裁判長に投げかけた言葉を質す。大内は堂々と、

〈「ネクタイをしてきて下さい」と言いました〉

〈そのネクタイで首を絞めたいという気持ちがあったからそう言いました〉

 図らずも、法曹三者を「対象」にしかけていたことが露見してしまったのだ。

 前出デスクが言う。

「弁護団は大内について、『重複する複雑で重篤な精神面の障害』があるとしている。つまり共感性の欠乏や衝動性など精神発達上の障害と、双極性障害(躁うつ病)とが重複していると捉えており、いずれの犯行時にも責任能力がなかったとして無罪を主張しています。そのために具体的なエピソードが引き出され、大内の猟奇性が前面に押し出される裁判となっています」

 裁判員に向かって弁護人が“こんな動機で人を殺すなんて理解できますか”と問いかけるなど、ことさらに異常性をクローズアップする戦術とも受け取れるのだが、主任弁護人の多田元弁護士は、

「裁判では『治療が必要だ』と言っているだけです。それは“異常”ということと同じではありません」

 治療を要するから、と刑を免れられてはたまったものではないが、さる司法関係者はこう指摘するのだ。

「責任能力を計るには、行動制御能力と事理弁識能力の有無が重要です。今回の事件で大内は、殺人を『してはいけないこと』と認識していたし、森さんの殺害時には証拠隠滅を図っています。また薬品に詳しいことは大学でも知られているため、代わりに斧を用いたりと、行動も制御できている。責任能力が認められないはずがありません」

 少年法は、大メディアにとって金科玉条である。が、容貌や名前を秘して矯正に役立つのなら世話はない。

特集「『タリウム女子』は法廷で『検事も弁護人も殺したい』 大メディアの『19歳殺人鬼』顔・実名隠しに何の意味があるのか」より

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