虐待する「鬼畜」な親たち
社会2017年1月10日掲載
虐待事件のニュースが毎日のように流れてくる。
「ああ、またか」と耳をすり抜けて行く感さえないだろうか。
厚生労働省の調べによると、平成26年度、児童虐待に関する相談件数は過去最多の88931件、亡くなった人数は69人(以下同)。亡くなった人数は、心中も含めて「虐待」と認められたものだけなので、実際の数はいったいどれくらいになるのだろうか……。
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虐待をするのは実の両親がほとんど
データの詳細にも驚きは増す。
虐待を受ける子供たちの年齢構成は、「小学生」が34.5%、「3歳~学齢前」が23.8%、「0歳~3歳未満」が19.7%で、「中学生」14.1%と「高校生」7.9%が続く。弱く小さい子供こそが虐待の対象なのだ。
「誰が虐待しているのか」といえば、「実母」が52.4%、「実父」34.5%で血のつながった親がほとんどを占め、家庭という密室で虐待があることがはっきりと数字になっている。「実父以外の父」は6.3%に過ぎない。
とはいえ、子供の行動は予測がつかないもの、母親なら誰しも育児をする中で、思わず手を出したり、あたったりすることがあるだろう。そして、母親というのはその一方で、罪悪感をも同時に抱きもする。自分が間違ったことをしているのではないか。子供の心を傷つけてしまったのではないか。自分は母親失格なのではないか――。この裏腹さ、どうしたものか。
逆説的な母親の「強さ」
虐待事件を数多く手がけるノンフィクション作家の石井光太さんに話を聞いてみた。
「そうなんです。ですが、母親が本来、そういう罪悪感を抱くことはいいことです。なぜなら、そういう感情を抱くことで、むしろ子供を大切にして、しっかりと育児をしようとするからです。
『叩いてごめんね』『怒ったママが悪かったよ』と反省して見直すきっかけになる。謝ったり、反省したりするからこそ、やさしさがそれまで以上に芽生えるんです。つまり、自分の失敗を糧にするからこそ、母親として成長していくのだとぼくは思います。母親というのは、そういう逆説的な強さをもっている。そういう母親の反省が子供にも伝わるからこそ、子供は『同情』や『許し』の感情を持ち、情緒の細やかな子供に育って行く。
同時に『ママ、大丈夫だよ』『ママ、僕も悪かったよ』、という会話の中でこそ、母と子供の関係性も強まっていきます」
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