日本人は外交に「ダーティ・マネー」を使う覚悟があるか 青山繁晴・百田尚樹の「大直言」対談(1)

国際2017年2月3日掲載

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作家・百田尚樹氏

百田 他国に「歴史問題」を外交カードとして使われ続け、たとえこちらに理があろうとも、その情報戦に必ずしも日本が勝っているとは言い難い状況があることは、衆目の一致するところだろう。

 政治家や外務省は一体何をしているのか。

 そのように歯がゆい思いをしている方も多いのではないだろうか。

 こうした問題について、参議院議員で作家の青山繁晴氏と作家の百田尚樹氏は、二人の対論をまとめた新著『大直言』の中で、刺激的な提言を示している。その部分を以下、引用してみよう。(『大直言』第2章「外交を議論する」より)

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■ダーティー・マネーに免疫を持て

 さきほども申し上げたように、ロビー活動が日本は苦手、というかほとんどできていない。そこの問題が気になります。

青山 ロビー活動があるというのは、汚い金も使うという意味ですよ。それを、日本国民がちゃんと認めて、そして、外交官にもそういう人を選んで権限を与えないといけない。

 そういうことをしないのは日本の良いところでもあるのは確かなんです。日本の官僚は勝手なことはしないんです。

 外交官でも自衛官でも勝手なことは、ほとんどしない。これは世界的に見ても、珍しい人たちなんです。さきほどお話ししたようなけしからん外交官もいるんですが、ダーティなお金を使って、私腹を肥やしているような人は、すくなくとも今はない。

 これからロビー活動を強くしましょうということをいう時には、ダーティなお金を使う権限を持たせる必要がある。中国、韓国のダーティ・マネーというのは、ものすごい金額ですよ。

 日本がそれに対抗することはできます。経済大国ですから。

 しかし、その権限を誰が与えるのか。安倍総理ではないでしょう。

 ぼくらです。国民一人一人が国際社会の現実を見つめてそう判断するかどうかです。ロビー活動というのはウィズ・マネー、お金と一緒に動くんです。そうじゃない例もたまにあるけど。

百田 たとえば、韓国は慰安婦像を世界に設置してきましたよね。あれだけの資金、どこから出てるんやという話ですもんね。

青山 チャイニーズ・マネーでしょう。アメリカでも中央のワシントンD.C.の議会の活動に対しては監視の目も厳しいし、法的縛りも強いのですが、地方議員あたりになると結構ゆるくなって、ハッキリ言えば汚い金を受け取りやすい州もあるんです。そこに韓国人を増やしていき、まず有権者を増やす。そこから始めて影響力を強めていくわけです。当然、狙った候補者への選挙協力もします。

 その金は基本的にはチャイニーズ・マネー、中国共産党から来ているとぼくは見ています。もちろん共産党に確認できないので、これはあくまでもぼくの一方的な見方ですよ。でも、ぼくの知るインテリジェンス関係者は、日米英独仏、どこの人もそう見ている。

 それに本当に対抗するんだったら、ぼくらは税金の中から、その負担もしなきゃいけないんです。

 そしてこの汚いお金の問題点は、表に出ないから不正を生むということ。コップ一杯の水に喩えれば、一滴は本当にロビー活動に使うんだけれども、残りは自分で飲んでしまう人が現れるということ。

 さきほど言ったように、世界にはそういう人だらけです。

 日本人には少ないと思うけれども、そういう問題も眼をそむけず決断しなくてはいけない。

■官僚が敗戦を招いた

百田 外務省の問題は、全官僚に通じます。官僚になるのは国家公務員総合職試験の合格者、東大法学部が圧倒的に多いんですが、あとは京大、早稲田、一橋、慶応あたりでしょうか。問題はこの試験を受けるのが二十歳そこそこということです。

 二十歳なんてガキもええところです。世の中のことを何も知らない。社会も国際問題も何も知らない。

 もちろんいろんなところで遊んだり、苦労をして社会を見ている二十歳もいますが、そんなやつは試験には通りません。

 ひたすら授業に出て、せっせとノートをとって、試験でいい点数をとったやつが官僚になって、そのまま出世していく。

 青山さんのおっしゃる通り、そういう人たちは正解のある問題には強い。過去問があって正解もあるようなときには、瞬時に模範解答を示せる。

 ところが、外交に限らず経済でも国際問題でも、ほとんどのことには答えがないんですよ。世の中のことは全部、何がどう動くかわからない。

 それでもうまくいっているときは官僚は役に立つんです。でも、この先が予測できないような状況では、マニュアルに強いような官僚は太刀打ちできなくなる。

 しかも問題は、官僚の出世は最初の試験の成績にかなり左右される。途中で追い抜かすとか、逆転がまずない世界なんですね。

 実は、戦前の日本軍もそうでした。日本が大東亜戦争でアメリカに敗れた理由は数多くあります。

 最大の理由は資源がなかったということですが、実は、同じだけ資源があったとしても、勝てたかどうかわからないという人もいます。というのは、人事がひどかった。

 海軍兵学校を卒業するときのペーパーテストの順位のことをハンモックナンバーと言うんですが、この順位がその後にもつきまとう。つまり、その順番に偉くなる。

 途中で才能を見抜かれて出世する、といったこともなければ、逆に能力が低いから左遷されるということもない。二十歳くらいの時のペーパーテストがその後の人生を左右するわけです。

 しかし、実際の戦場に「正解」なんてあるはずがありません。何が起こるのかわからないのが戦場です。だから当時、司令官だった中将、大将あたりが、あたふたして何もできなかったケースがものすごく多かったんですよね。

参議院議員・青山繁晴氏

青山 そのとおりです。そして大きな問題は、さきほど申し上げたようにすでに戦後世界が壊れて、さらに正解、模範解答はない世界になっているということなんです。アメリカが超大国として支配する構造が終わりつつあります。

 そこにはオバマ大統領の個人的資質が関与していたことも否定はしません。アメリカの外交官と酒を飲みながら話すと、「オバマは対人恐怖症なんだ」と言います。対人恐怖症は、日本人には多いけれども、アメリカ人にはとても少ない傾向です。ところがよりによってそういう人が大統領になってしまった。

 だから大事な電話に出なかったりするし、共和党ともコミュニケーションが取れない。

 しかし誰が大統領になっても、もはやアメリカが昔のような“強さ”を示すことはできないでしょう。となると、外交の世界は本格的に「模範解答なき世界」に突入する、ということです。

 実は敗戦後の日本の外務省には、いつも同じ「正解」がありました。アメリカに気に入ってもらえれば偉くなれる、ということです。それがわかりやすく出ているのが人事でしょう。

 他の省庁では事務次官がキャリアのトップなんですが、外務省だけは事務次官よりも上の存在がある。それが駐米大使です。

 ここまで依存していたアメリカが世界でプレゼンスを失うことを、日本の危機だと思われる人もいることでしょう。しかし、これは逆転の秋(とき)でもあるんです。

 さきほど触れた中小の商社マンたちは、地べたを這いずりまわりながら、世界中で売れそうにないものを売ってきた。彼らの凄いのは、巨大商社のようなカラクリもないなかで売ってきたという点です。カラクリというのは、相手国との巨大な既得権益との深い癒着です。中小商社にはカラクリをつくれるだけのカネがない。

 じゃあ彼らは何を武器にしているか。人間力です。本当にそうなんです。

 日本にはまだそういう人材がいるんだから、官民の交流をやればいいんですよ。アメリカのこれまでの強さは、官民交流人事のお陰という面があります。政権交代の時が顕著ですが、官僚はどんどん辞めて民間に移籍するし、逆に民間からどんどん政府にも入ってくる。

 これは建国からの歴史が浅い国だから出来たということもあるんですが、せっかくアメリカと仲がよい日本なんだから、良き制度は採り入れればいいんです。そうすれば外務省は音を立てて変わりますよ。

(後略)

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 ダーティ・マネーを使うことも、政府に民間の人材を積極的に登用することも、日本国内では、さまざまな抵抗があるだろうが、そろそろこうした直言を真剣に考える時期なのではないか。

デイリー新潮編集部