紀里谷監督も! 必要最低限がない「ミニマリスト」の極限スタイル

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東日本大震災の影響

 そもそもこの「ミニマリスト」という言葉、いつ頃、どのような経緯を経て日本に定着したのだろうか。16万部のヒット作となった『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』の著者で、元「ワニブックス」編集者の佐々木典士(ふみお)氏が解説する。

「源流は2005年くらいまで遡ることができるのですが、大きな影響を与えたのは、東日本大震災でしょう。皆、“この国は数十年に一度、こんな大災厄が起こるんだ”という事実を強く感じた。現に室内でモノに押し潰されるという恐ろしい経験をした人も少なくなかった。これにより、モノに対する見方が変わった人は多かったと思います。そして震災後にミニマリスト、ミニマリズムという言葉が徐々に紹介され始め、国内では14年頃に最初のブームを迎えたのです。現在では世界的に普及していて、僕の著作も英語、中国語、イタリア語など8カ国語に翻訳されました」

 佐々木氏は、冒頭で紹介した『方丈記』を挙げ、

「ミニマリストという生活スタイルと、日本人が本来持つ、伝統的な美的感覚は親和性が高い」

 と指摘する。

「実際、僕の本を読んで『鴨長明の方丈記ですね』と言ってくれる方が多いのです。確かにお寺に行って『何もない座敷が落ち着く』と感じる人もいるでしょう。それに絵画を比べると、たとえば西洋の宗教画に、人をびっしりと描き込んでいるものが多いのに対し、日本の水墨画は空白を強調したり、人の数が少ない傾向がある」

 そんな佐々木氏も、7~8年ほど前までは文字通りの「汚部屋」に住んでいたという。カメラマニアで、部屋には暗室があり、大量のCDや本、趣味のグッズなどが積み上げられていた。

 だが「断捨離」ブームで考えを改め、ミニマリストという言葉に出会って一気に私物を処分したという。

「写真でご覧の通り、現在、家具は折り畳みの机とイスしかありません。何もモノがない部屋で、僕が雑巾がけしている様子を見て、『OH! ZEN(禅)』と感心してくれる外国の方も多い」

 確かに彼の部屋には、冷蔵庫など必要最低限の物すらないように見える。扉を開けると、引っ越し先物件の下見に来たような錯覚を覚えるに違いない。

「洋服は冬用のダウンジャケットにスーツが1着だけ。白いボタンシャツ数枚、Tシャツ数枚、ズボンが2本で、全て無地。下着はパンツと靴下が4枚ずつです」

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断捨離どころか必要最低限がない!ミニマリストの極限スタイル(2)へつづく

週刊新潮 2017年2月2日号掲載

特集「断捨離どころか必要最低限がない!『ミニマリスト』の極限スタイル」より

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