NHKスペシャルで話題の“マインドフルネス瞑想” 「安易な瞑想は危険」との指摘も

社会2016年11月24日掲載

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 マインドフルネス瞑想が大流行の兆しを見せている。

 上座部仏教に由来する伝統的な瞑想法だが、最新の脳科学で「ストレス軽減」「集中力アップ」「自律神経回復」などの効果が実証されたことが追い風となり、NHKスペシャルで特集が組まれたり、グーグル社の幹部研修に導入されたり、全世界で注目を集めている。

 日本でもビジネス層を中心にマインドフルネス瞑想を実践する人が増えているが、その陰で問題化しているのが〈瞑想難民〉だという。

〈瞑想難民〉とは、いったい何か――? 上座部仏教の本場ミャンマーで瞑想の修行をした経験を持ち、『自由への旅:「マインドフルネス瞑想」実践講義』を翻訳した魚川祐司さんに話を聞いた。

■「瞑想難民」とは何か

「〈瞑想難民〉とは、抑うつ症状などを解消しようと瞑想を始めたにもかかわらず、かえって症状を悪化させてしまう人々のことです」

「マインドフルネス瞑想は〈気づきの瞑想〉とも呼ばれ、瞑想によって集中力を研ぎ澄まし、あらゆる物事をあるがままに観察し、それによって苦しみの根源を解体することを目指します」

「ところが、瞑想の基本となる〈微細な感覚を丁寧に観察することで思考を手放す〉ことが、初心者には難しい。瞑想指導者から『丁寧に観察しろ』『何も考えるな』と言われると、かえって混乱して、うまく出来ない自分を責めてしまう」

「瞑想指導者の中には、『座ればわかる』と具体的な指示を出さない人もいれば、ちょっとしたことでも事細かに指示する人もいます。教え方は様々で構わないのですが、指導する相手の性質を見極めずに、自分のやり方をただ押しつけてしまうような指導者は、〈瞑想難民〉を生み出しやすいと言えるでしょう」

■瞑想で「成功」できるか

「次によくあるのが、瞑想が進むにつれて意識が変容して、美食やお酒を嗜んだり、音楽や映画を鑑賞したり、恋愛やセックスを楽しんだりする意欲が減退して、『こんなはずじゃなかった』と思い悩んでしまうことです」

「こうしたことは、自分が瞑想に求めるものと、実際に取り組んだ瞑想法の〈最終目的地〉が、異なる場合に起こります。たとえば、もともと煩悩を消滅させることを目的としている瞑想法を実践すれば、結果として快楽を求める意欲が減退するのは、むしろ当然であることになります」

「しかし、最近はマインドフルネスを〈ビジネスで成功する手段〉であるかのように喧伝する本もあるので、そのような目的で瞑想を始めた人は、『あれ? 最近、何だか意欲が下がってきたような…』となってしまうようです」

「マインドフルネス瞑想は、ストレスを軽減し、集中力をアップさせ、心身の健康をもたらす効果があるので、考え方次第でビジネスにもプラスに働きます。ただ、そのためには瞑想によって自分が何を得ようとしているのか、正しく理解しておくことが欠かせません」

「〈瞑想難民〉にならないためには、『自分が瞑想に求めるもの』と、『瞑想が自分に与えるもの』を、ともにはっきりと把握しておく必要があります。そのために、たとえばマインドフルネス瞑想であれば、その源流となっている上座部仏教のウィパッサナー瞑想がどのような目的と効果を持つ技法であるのかということを、確認しておくことは大切でしょう」

「私自身は仏教徒ではないですし、最終的な〈悟り〉を目指さなくても、マインドフルネス瞑想を日常生活に活かすことは可能だと考えています。ぜひ多くの方が、良い瞑想指導者と巡り合い、マインドフルな日々を送れるように願っています」

魚川祐司(うおかわ・ゆうじ)
仏教研究者。1979年、千葉県生まれ。東京大学文学部思想文化学科卒業(西洋哲学専攻)、同大学院人文社会系研究科博士課程満期退学(インド哲学・仏教学専攻)。2009年末よりミャンマーに渡航し、テーラワーダ仏教の教理と実践を学びつつ、仏教・価値・自由等をテーマとした研究を進めている。著書に、『仏教思想のゼロポイント:「悟り」とは何か』、『講義ライブ だから仏教は面白い! 』。共著に、『悟らなくたって、いいじゃないか:普通の人のための仏教・瞑想入門』。訳書に、『ゆるす:読むだけで心が晴れる仏教法話』『自由への旅:「マインドフルネス瞑想」実践講義』。

デイリー新潮編集部