ヤクザ50人が乗り込んで大暴れ…「会津小鉄会」大分裂騒ぎ

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山口組の司忍組長

〈オラー! 何しとんや!〉1月11日の朝8時、京都市下京区の街角で、時ならぬ叫び声がこだました。この日、指定暴力団「会津小鉄会」の本部に大勢のヤクザが乗り込み、ビルを占拠してしまったのだ。内部で起きていたのは、トップの椅子を巡るクーデター騒ぎだという。

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 会津小鉄会といえば、京都に本部を置き、そのルーツは江戸時代にまで遡るとされている。現在の構成員は140人と減っているが、かつては山口組の大幹部を襲撃するなど武闘派として知られる暴力団だ。

 その「名門ヤクザ」に異変が起きたのは、占拠事件の前日のこと。京都の暴力団関係者が言う。

「この日、山口組傘下の弘道会幹部2人が会津小鉄会本部にやって来たんですわ。そこで話し合われたのが、会津小鉄会の後継者問題やった。馬場美次会長は昨年8月に詐欺容疑で逮捕されており、法廷で六代目会長からの引退を表明しとる。弘道会の2人は、それを催促しにいった。若頭に対して、早う跡目を決めんかと迫ったわけです」

 もともと山口組は高山清司若頭が馬場会長の「後見人」という立場にある。しかし、独立した組織に乗り込んでトップ人事に口を挟んだのは、どうしてなのか。

「後ろにはやっぱり山口組の分裂騒動があるということや。一昨年8月に山口組から神戸山口組(以下「神戸」)が分裂したとき、どちらにつくか板挟みになった友好団体が12あった。大半は山口組を支持して『神戸』とは縁を切ったんやが、会津小鉄会でもモメた。でも、馬場さんはよう決めんかったんや。なぜなら、『神戸』の井上邦雄組長と兄弟分の関係にあったからな」(同)

 そこで弘道会の幹部らは馬場会長を早く引退させ、山口組寄りの後継者を立てようとしたというわけである。事実、この日、馬場会長の引退と、山口組に近いとされる若頭への交代を知らせる書状が関係者に送られた。

 が、この一件を知った「神戸」側も黙っていない。

■ボコボコにやられた

 書状が送られた直後、馬場会長の直筆サインが入った別の書状がふたたび関係者に送られる。そこには、前の書状は与(あずか)り知らぬもので、若頭を「絶縁」するとあった。ヤクザの世界では、最も重い処分である。

 そして、翌朝、冒頭の占拠騒ぎが起きる。「神戸」傘下の山健組健竜会幹部が約50人を引き連れて会津小鉄会本部に乗り込むと、中にいた組員を蹴散らしてしまったのだ。路上では、山口組寄りと見られる組員が携帯で怒鳴る。

〈いきなり入って来てボコボコにやられたんや!〉

〈あいつ(馬場会長)が辞める言うて出ていったはずやないか!〉

 かくて、山口組と「神戸」の勢力争いに巻き込まれてしまった会津小鉄会だが、このクーデター騒ぎ、一件落着というわけにはいかない。ノンフィクションライターの西岡研介氏が言う。

「この騒動で山口組一派を排除した会津小鉄会は『神戸』に近い幹部が跡目を継ぐと見られています。一方、絶縁された若頭にも多くの組員がついている。聞くところによれば『七代目京都会津小鉄会』という組織を立ち上げて対抗すると見られています」

 ヤクザの世界を震撼させた山口組の分裂騒動は、古都の静寂も破ろうとしている。

ワイド特集「秘せずは花なるべからず」より

週刊新潮 2017年1月26日号掲載

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