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どういうヒトがヤクザになるのか?(1) 家庭の問題を考える

■更生する人とグレ続ける人の差は?

 古くは高倉健や菅原文太の主演作品、最近では北野武監督作品などを見て、「カッコいいなあ」と思う男性は少なくないだろう。しかし、その気持ちをそのまま育んで、本当にその筋の人になるかといえば、滅多にそういう人はいない。

 また、若い頃にグレている人は少なくないが、ずっとグレ続けてヤクザになる人はそのうちのごく一部である。

 グレる人、グレても更生する人、グレ続けてしまう人にはどのような違いがあるのか。

 この問題に取り組んで研究を続けているのが、犯罪社会学者の廣末登氏である。廣末氏は、元組員らへの丹念な聞き取りから、彼らがヤクザになった背景を探ってきた。その成果をまとめたのが、新著『ヤクザになる理由』。

 元組員らの生々しい証言が多く収録された同書では、その「理由」について、「家庭」「学校」「仲間」「地域」「個人的資質」における共通項を示している。

 そして、これらの証言を読むと、単純に「出来の悪いヤツがグレて、その成れの果てがヤクザだ」といった簡単な話ではないことがわかってくるのだ。

 今回は、この本から「家庭は彼らに何をしたのか」を見てみよう。以下は、同書で紹介されている元組員らの述懐の一部である。

■門限なんか無い

家庭は彼らに何をしたのか…

「(中学生の時にはもう門限は)なかったな。夜店行くんが楽しゅうてしょうがなかったわ。中学校の頃にも(夜の)11、12時には帰れよ言うんが親父の口癖やった」

「(父親は)いつも家におらんかった。仕事もやけど、芸能人の追っかけが激しかった(苦笑しながら)」

「わし、ほったらかされとったがな、金だけは貰いよった……そうやな、1日300円位か」

「(夫婦喧嘩は激しく)出刃(包丁)持ってしよったわ」

 同書で多くの元組員が「門限なんか無かった」と口々に証言している点は印象的である。

 廣末氏の調査によると、暴力団加入経験者には、「単親家庭」(離婚などに起因する一人親家庭)、共働き家庭や長期出稼ぎ(出張)家庭のように機能的観点からみた「疑似単親家庭」、家庭内暴力が絶えない「葛藤家庭」、学童期に門限がないなど親が躾や勉強の面倒を見ない「放置家庭」、親と子の会話が極めて少ない「意思疎通上の機能不全家庭」等々の出身が多いことが分かったという。しかも、これらの要素が複数見られる家庭の出身者が多く見られた。

■単親家庭のリスク

 単親家庭のリスクを強調すると、「シングルマザーへの偏見ではないか」といった反発もあるかもしれない。この点について廣末氏は、こう述べている。

「誤解なきように申し上げておきますが、私も必ずしも単親家庭で生育した子どもが、非行にはしり、グレ続けるなどという主張をするつもりはありません。筆者の知人の中にも、単親家庭でグレなかった者もいます。

 ただ、学問的に見た場合には、そうした傾向があるということは指摘したいと思いますし、できれば、親となった方たちには、シングルマザー(またはファーザー)家庭を作らないようにしてほしいとも思うのです。

 危険なのは、安易にシングルマザーの擁護や賛美をすることは、かえって彼女たちへの支援を緩めることにつながりかねないということです。

 シングルマザーでも問題ないのならば、支援の必要なんて無いじゃないか、というリクツを補強しかねません。

 子どもがグレるリスクを高めるような環境は、できるだけ無くすべきです」

デイリー新潮編集部

  • 2016年7月21日 掲載
  • ※この記事の内容は掲載当時のものです

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