敗北に終わったプーチン会談…安倍官邸はなぜ前のめりだった?

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目が全く笑っていない(左)

 かつての東西冷戦よろしく、普段、日本の大手紙は左右に分かれ、互いに牽制し合っている。しかし、今回の首脳会談では、気持ち悪いほどに、見事に評価を一致させた。日本の敗北だと……。ならば、前のめりに映った安倍官邸の姿勢は、一体何だったのだろうか。

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〈日ロ首脳会談 あまりに大きな隔たり〉(朝日)

〈領土解決ほど遠く〉(毎日)

〈進展みられず〉(読売)

〈「引き分け」より後退か〉(産経)

 首脳会談直後の各紙には、こんな見出しが躍った。「安倍政権応援団」とも言われる産経までがこう評したことは、大方の日本人の「失望」を象徴していた。実際、日露関係に精通する北大名誉教授の木村汎(ひろし)氏も、

「日本にとって99%敗北。元島民の北方領土への自由訪問が広がりそうなことだけは1%分評価できます」

 と、手厳しい。

 大手紙の政治部デスクが振り返る。

「例えば読売新聞が、9月23日に〈北方領 2島返還が最低限 政府、対露交渉で条件〉と報じたように、少なくとも2島は返ってくるのではないかとの楽観論が広がっていました。その原因としては、9月にウラジオストクで行われた日露首脳会談後、安倍総理が『強い手応え』と語っていたことが大きい」

 さらには、

「5月の時点で、世耕さん(弘成・ロシア経済分野協力相)が、自分の存在感を示したかったのか、2島が返ってくるかのようなことを言っていた。これにマスコミは乗っけられたんですね」(外務省関係者)

 ところが、いざ首脳会談が近付いてくると、

「米国でロシア贔屓のトランプが大統領選に勝ち、ロシアにしてみれば敢(あ)えて日本に譲歩して『味方』につける必要がなくなった。事実、その後、11月14日に世耕さんのカウンターパートだったロシアのウリュカエフ経済発展相が収賄の容疑で拘束され、一気に交渉に暗雲が垂れ込めたんです。11月19日にペルーのリマでプーチンと会った後には、安倍総理が『大きな一歩を進めることはそう簡単ではない』と認めざるを得ないところまで後退を余儀なくされました」(同)

 挙句、プーチン氏に「領土問題は全くない」と言われる始末。ロシア情勢に詳しいユーラシア21研究所理事長の吹浦忠正氏曰く、

「2016年は日ソ共同宣言と日本の国連加盟から60年、そして安倍晋太郎さんが亡くなってから25年の年でした。安倍総理は節目の年にこだわる人ですから、何とか成果を出して、亡きお父さまに報告したい思いが強かったのでしょう」

 新年が、日露交渉史において「負の節目の年」とならないことを切に願うばかりである。

特集「元KGB『プーチン』大統領に期待する方が大間違い! 新聞が書かない『おそロシア首脳会談』7つの不審」より

週刊新潮 2016年12月29日・2017年1月5日新年特大号掲載

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