ケンブリッジ飛鳥がプロ転向 “9秒台なら1億円”の所属先を辞める理由

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 今夏のリオ五輪で銀メダルを獲得した陸上400メートルリレー。そこでアンカーを務めたのがケンブリッジ飛鳥(23)である。精悍なルックスも相俟って、凱旋後は各所で黄色い声援を浴びている。そんな彼が大きな決断をした。

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ケンブリッジ飛鳥

 アメリカのスポーツ用品メーカー「アンダーアーマー」の日本総代理店である「ドーム」社。そこがケンブリッジの所属先だった。

 そのドーム社の安田秀一会長が、

「ケンブリッジが“日本人初の100メートル9秒台”を達成したら、1億円のボーナスを出す」

 と記者たちに公言したのは今年6月のことだった。

 100メートルにおける日本人の最速記録は、18年前に伊東浩司がマークした10秒00。現役選手では、東洋大の桐生祥秀(21)が10秒01と最も肉薄し、ケンブリッジも10秒10まで差を詰めてきている。

 大手紙陸上記者曰く、

「業界では、“天候など条件が揃えば誰が9秒台を走ってもおかしくない”と言われています」

 このとびきりの“ニンジン”をぶら下げられたケンブリッジ当人は、

「モチベーションが100倍になった。車を買いたいし、買ってもおつりが出る」

 と、鼻息を荒くし、ライバルの桐生も、

「いいですよねえ」

 とうらやましがった。

 ところが、である。

「彼は今年いっぱいで同社を辞めることになりました。今春入社してまだ1年にも満たないんですけどね。もちろん“1億円ニンジン作戦”も終了です」(先の記者)

 いったい何があったのか。

■内村航平もプロになるが

 安田会長に尋ねると、

「彼がプロになりたいって言うから、快く送り出してやりましたよ。今後どうするか? そこはわからない。彼にはエージェントが付いたから、そこで相談しているんじゃないかな」

 陸上選手がプロ――とは聞き慣れないが、有森裕子や高橋尚子、短距離では為末大がその道に進んでいる。ただ彼らはいずれも十分な実績を残してプロになった。

 先の記者が首をかしげる。

「五輪連覇を果たした体操の内村航平(27)もこのたび、5年半所属していたコナミを退社し、プロになることを決断しました。内村なら、キャリアも申し分ありませんし、スポンサーも引く手数多ですが、その内村でさえ、4年前から会社に打診をし、1年かけてプロへの準備をしたといいます。対して今回のケンブリッジは、銀メダルを獲得したとはいえ、まだまだ発展途上なわけで……」

 そんななか、さる陸上関係者が声を潜めて言う。

「帰国後のケンブリッジは、北九州の小売店でのトークショーやら、佐賀での小さなイベントやらに駆り出されてました。それも、かなり直前になって“行け”と命令されていたようですよ。もちろん、社員である以上は従わざるを得ない。彼は、そんなドーム社の人使いの荒さに嫌気がさしたのです」

 気の毒とも思える反面、それこそ企業所属選手の仕事だと思うのだけれど……。

 ケンブリッジ本人にも話を聞こうとしたが、

「(取材は)受けていないので」

 とコメントを拒否。

「12日に行われた毎日スポーツ人賞の表彰式でも、リレーメンバー4人のうち、ケンブリッジだけが取材に応じることなく、逃げるように会場を後にしてしまったんですよね」(先の記者)

“逃げ足は日本最速”なんて言われなきゃいいけど。

ワイド特集「年忘れの備忘録」より

週刊新潮 2016年12月22日号掲載

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