羽生結弦を脅かす新星・宇野昌磨 祖父は世界的洋画家

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 ジャンルはまるで異なれど、ともに「美の探究者」であるのは間違いない。群雄割拠の男子フィギュアスケートで、羽生結弦(22)のポジションをうかがう新星・宇野昌磨(18)。祖父は高名な画家だというから、華麗な滑りも頷けるのだ。

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“絶対王者”の羽生結弦(22)

 目下“絶対王者”の羽生に肉迫している宇野は、中京大学1年生。スケート担当記者が言う。

「シニアに参戦した昨年はグランプリ(GP)ファイナルに初出場。羽生、スペインのフェルナンデスに次いで3位でしたが、今年は4月の『チームチャレンジカップ』で世界で初めて4回転フリップを成功させました。10月にはGP第1戦のフリーで4回転を3つ決めて優勝、第3戦でも2位に入り、12月8日からマルセイユで開かれるファイナルへの出場を決めています」

 159センチと小柄、野菜嫌いの偏食で知られながらも、

「流れるようなステップワークが身上。自身の憧れでもある“高橋大輔2世”とも呼ばれ、平昌五輪の代表争いに名乗りを上げるのは確実です」(同)

 宇野は5歳の時、地元・名古屋のリンクで浅田真央から声を掛けられて競技を始めたといい、

「父親はIT関連会社の社長、祖父は世界的に知られる洋画家という環境で育まれたのです」(同)

 その祖父とは、愛知県犬山市に住む宇野藤雄画伯(89)。これまで二科展に23回入選しており、芸妓や武者などをモチーフに、カンヌ国際展、オーストリア展やモントリオール展など海外での受賞歴も数多い大御所である。

■「審美眼を確かめる」

 宇野の演技は、祖父譲りの芸術的素養に裏打ちされているのか。画伯に聞くと、

「仕事でずっと国内外を飛び回っていたこともあり、昌磨に絵を教える機会はありませんでした。でも、昌磨が6歳の頃から、掲載された新聞の切り抜きは全部とってあります」

 とのことで、

「芸術は、努力を超えた先の領域にあると常々思っていますが、芸術点が高いと言われる昌磨の場合は天性のものでしょう。努力でたどり着けるとは限りません。あの子の滑る姿を見て、私も芸術的な審美眼を確かめているのです」

 何でも、宇野の全身から発せられる“オーラ”で調子が分かるのだと言い、

「『今日は大丈夫』『負けそうだ』などと見定め、結果、その通りの成績であれば私の審美眼が間違っていなかったことになります。テレビで観戦した後、アトリエであらためて絵と向き合うと、直すべき箇所が見つかったりもする。不思議と客観的になれるのです」

 ジャンルの垣根を越えた美の相乗効果が生まれているというわけである。

「私も『よう描けたな』と手応えを感じる時は、気がついたら飲まず食わずで10時間もキャンバスの前で没頭していたなんてこともある。忘我の境地とでも言いますか、スケートでもそういう姿勢で取り組めば見る人に伝わるものです」

 その上で、孫に対して次のように提言するのだ。

「目標はあくまでオリンピックの金メダル。だから、それまでは『全部転べ』というのが私の持論です。人間、なまじ成功し続けると浮足立ちます。今年初めて4回転を跳んだと言っても、それはまだ“術”に過ぎない。何十回と跳んで失敗すれば、なぜダメだったのかと反省ができる。感性を表現できる域に達しないと、極めたことにはなりません」

 斯界の達人ならではのエールなのだ。

ワイド特集「1度目は悲劇 2度目は喜劇」より

週刊新潮 2016年12月8日号掲載

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