東証1部「トランプ銘柄」は大丈夫か? 値上がり期待の銘柄は

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 相場格言に曰く、〈天災は買い向かえ〉。突発的な出来事によって株価が急落しても、絶好の押し目とみて買い進めるべし、というワケである。実際、トランプショックで一時は1000円超の値下がりに見舞われた日経平均株価は、あれよという間に持ち直して1万8000円台に突入。だが、兜町が沸く「トランプ銘柄」は本当に大丈夫なのか。

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 世紀の番狂わせの直後から、株式市場は活況を呈している。経済部記者によれば、

「トランプが選挙中に掲げた“ドッド=フランク法”の規制撤廃と、“10年で100兆円”規模の公共事業が思惑買いを呼んでいます。金融関連では、モルガン・スタンレーと資本提携する三菱東京UFJの株価が急上昇した。インフラ関連株も、アメリカに生産拠点を持つタダノや信越化学、太平洋セメントが堅調です」

「暴言王」のひと声で暴落も

 一方、ドル円相場は11月18日に1ドル=110円台を記録。この円安ムードに拍車を掛けそうなのが、「本国投資法」の存在だ。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦氏が解説する。

「アメリカは法人税率が35%と高く、グローバル企業は海外で売り上げた利益を本国に送金しません。結果、アメリカに資金が集まらず、雇用も生まれない状況に陥っているのです」

 そこで、ブッシュ政権下の05年に施行されたのが本国投資法だった。

「1年間の時限立法ながら、法人税率を下げたことで3000億ドル(約33兆円)もの資金がアメリカに還流され、その間に14〜15円ほど円安が進んだ。トランプも同じ政策を打ち出すと考えられています」(同)

 となれば、狙い目はやはり輸出関連株だが、トランプが北米自由貿易協定(NAFTA)からの離脱を仄めかしていることには注意が必要だ。

■“穴株”

「仮に関税が復活すると、メキシコの工場でアメリカ向けの製品を作る自動車メーカーに影響が及びかねない。輸出関連でもソニーやパナソニックといった電機株の方が安全です。来年には“iPhone8”の発売が予想されているので、部品を手掛ける村田製作所やアルプス電気の株も値上がりが期待できます」(同)

 だが、そこは「カジノ王」のギャンブル相場。製造業の復活を掲げる新大統領が、2年後の中間選挙に向けてドル安に舵を切るリスクは高く、「日経平均がこのまま2万円に達する、という考えは短絡的過ぎます」(同)。

 それでも、株式評論家の植木靖男氏は、

「アメリカにはない、日本独自の技術は買わざるを得ません。その筆頭格は、ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊氏の研究に光技術で貢献した浜松ホトニクスや、高度なセンサーで知られるキーエンスです」

 また、トランプが日米同盟「タダ乗り論」を振りかざしたことで防衛関連株も物色されている。三菱重工(哨戒ヘリ)やIHI(哨戒機用エンジン)、新明和工業(救難飛行艇)、石川製作所(機雷)などだ。加えて、

「“穴株”としてはトランプが友好的な姿勢を見せるロシア関連が挙げられます。日ロ交渉の進展に繋がれば、マルハニチロなどの水産株には好影響。エイチ・アイ・エスの澤田秀雄社長が会長を務める澤田ホールディングスも、ロシアに銀行を所有しているのでビジネスチャンスが増える」(深野氏)

 ただし、こちらもロシア側の交渉窓口だった閣僚が逮捕され、暗雲が立ち込めている。トランプ相場が「全く素人向きではない」(前出記者)のは明らか。不安が先に立つ向きには、同じ格言でも〈辛抱する木に金がなる〉をお勧めしたい。

ワイド特集「希望とため息のストライプ」より

週刊新潮 2016年12月1日号掲載

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