イスラム国からの奪還開始も、「大都市モスル」が抱える難題

国際週刊新潮 2016年11月3日号掲載

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150万都市で激戦は続く(イメージ)

 ついにモスル奪還作戦始動だ。石油を産出し、150万とも言われる人口を擁するこの大都市は過激派組織「イスラム国」に2014年来、イラク国内の最大拠点として支配されてきた。

「イスラム国にとってここはイラク国内における最後の都市部拠点ですが、陥落は時間の問題でしょう」

 とは、軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏。

「イスラム国は自爆攻撃や仕掛け爆弾で抵抗していて、今後は化学兵器を使用する可能性もありますが、兵力差は圧倒的。米軍は数週間以上かかると言っていますが、遅くとも年内にモスルは奪還されそうです」

 ならばメデタシメデタシと言いたいところだが、現代イスラム研究センターの宮田律氏は憂い顔だ。

「モスルの住人はスンニ派が大多数。が、攻めるイラク軍の中核はイラク戦争後に政権を握ったシーア派。イラク全体では少数派のスンニ派は迫害されているとして両者に軋轢があり、また、攻略部隊の一翼を担うのはスンニ派住人への略奪や拷問の噂が絶えないイランのシーア派民兵。ここに、クルド人部隊ペシュメルガが加わっているのです」

 クルドは何が問題なのか。

「そもそもモスルは現在に到るクルド問題の一因となった地。第1次世界大戦後、クルド人に与えられる約束でしたが、石油が出ることがわかり、ローザンヌ条約でイギリスがイラクに組み入れてしまったのです」

 もつれた三者の歴史の糸を解きほぐすのは至難だが──がん患者を救うには、まずはがんを切るよりない。